[O101-5] 歯牙脱臼を生じた抗NMDA受容体抗体脳炎患者に整復固定・マウスピース作製を行い、歯牙脱落を防止できた1例
【緒言】ICU入室患者では長期の気管挿管下人工呼吸管理や鎮静管理により、口腔内トラブルが生じやすい状況にある。また脳神経疾患患者では意識障害及び不随意運動に伴い強い咬みしめを認めることがあり、口腔内トラブルを生じる場合もある。抗NMDA受容体抗体脳炎は全身のけいれんと合わせて口腔内の不随意運動が生じやすいと言われている。今回我々はICU入室中の抗NMDA受容体抗体脳炎患者の強い咬みしめにより生じた歯牙脱臼、歯槽骨骨折に対して、整復固定術、マウスピース作製を行い、歯牙脱落を防止できた1例を経験した。【症例】32歳女性。意識障害(GCS:E3V2M4)を認め、呼吸状態が不安定であったため、ICU入室の上、気管挿管、人工呼吸管理となった。精査の結果、抗NMDA受容体抗体脳炎と診断された。ICU入室後より上下顎の不随意運動が著明であり、強い咬みしめにより上顎前歯4本の脱臼と歯槽骨骨折を来した。また咬みしめによる気管チューブの破損も危惧されたため早急に気管切開術を施行した。上顎前歯部に対しては、当院歯科口腔外科にコンサルトし、整復固定術施行された。しかしながら再度強い咬みしめにより固定脱離したためマウスピースを作製した。その後も不随意運動継続したが、鎮静の調節とマウスピース装着により歯牙脱落を防ぐことができた。【考察】抗NMDA受容体抗体脳炎患者では口腔内不随意運動が生じやすいとされている。強い咬みしめにより予想以上に大きな口腔内トラブルを招く可能性がある。本症例では口腔内トラブル発生後すぐに歯科口腔外科コンサルトが実施されたことで、歯科医師による早期の治療介入が実現し、歯牙脱落や口腔内出血などの合併症を最小限に留めることができたと考える。