第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

中枢神経

[O102] 一般演題・口演102
中枢神経04

2019年3月2日(土) 09:25 〜 10:05 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:倉田 二郎(東京医科歯科大学医学部附属病院 麻酔・蘇生・ペインクリニック科)

[O102-1] 集中治療により良好な転帰を得たNew-onset refractory status epilepticus(NORSE)の一例

池尻 薫1, 川本 英嗣1, 鈴木 圭1, 新堂 晃大2, 石倉 健1, 藤岡 正紀1, 今井 寛1 (1.三重大学病院 救命救急・総合集中治療センター, 2.三重大学病院 脳神経内科)

【背景】
New-onset refractory status epilepticus(NORSE)は,先行感染後に強直間代性発作・痙攣重積で発症し,難治性痙攣が持続する症候群であり神経学的には予後不良と報告されている.今回,集中治療を行い良好な転帰を得たNORSEの1例を経験したため報告する.
【臨床経過】
生来健康な30歳男性.5日間続く発熱・水様性下痢で前医を受診し,検査上明らかな感染源を認めず,経過観察目的で入院した(第1病日).第3病日に突然,強直間代性痙攣をきたした,頭部MRIで脳梁膨大部高信号を,髄液検査で細胞数・蛋白増加を認め,急性脳炎が疑われた.抗痙攣薬の投与やステロイドパルス療法が施行されたが,痙攣が持続し意識障害が進行したため,第12病日に当院へ転院した.
当院搬入時,GCS E1V1M4,全身の強直間代性発作が頻発していた.気管挿管・人工呼吸器管理とし,鎮静薬・抗痙攣薬でコントロールを試みたが,多剤併用するも痙攣は持続した.また,高体温・DIC・ショック・心不全を併発するなど全身状態は不良であった.各種培養検査・ウイルスPCRはすべて陰性,抗NMDA受容体抗体など各種自己抗体も陰性であった.臨床経過・検査結果からNORSEと診断し,免疫グロブリン大量療法(第14から18病日)・ステロイドパルス療法(第23から25病日)・血漿交換(第26病日より)を施行し,体温管理や心不全管理などを行った.第31病日に一旦意識の改善が得られたが,翌第32病日から再度痙攣発作が持続した.その後血漿交換を繰り返し,同時に集中治療管理を行った結果,徐々に意識レベルは改善し痙攣の頻度も減少した.第70病日以降意識レベルの急速な改善を認め,第76病日に鎮静薬終了,人工呼吸器離脱が可能となり,第78病日に一般病床へ転棟した.高次脳機能評価およびリハビリテーションを施行し,第122病日リハビリ病院へ転院した.現在,症状の初発から約半年が経過し,独歩で当院神経内科外来を受診している.
【結論】
NORSEは予後不良との報告があるが,本例のように積極的な免疫療法と集中治療を行うことで治療し得ることがある.神経内科医のみならず救急・集中治療医も積極的な治療関与が必要であると考えたため報告する.