第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

中枢神経

[O102] 一般演題・口演102
中枢神経04

2019年3月2日(土) 09:25 〜 10:05 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:倉田 二郎(東京医科歯科大学医学部附属病院 麻酔・蘇生・ペインクリニック科)

[O102-4] 手術侵襲を契機とした側頭葉てんかんにより洞停止をきたした一症例

小林 敏倫1, 奈倉 武郎2, 須田 慎吾2, 須永 茂樹3, 小野 聡2, 池田 寿昭2, 河地 茂行1 (1.東京医科大学 八王子医療センター 消化器外科・移植外科, 2.東京医科大学 八王子医療センター 特定集中治療部, 3.東京医科大学 八王子医療センター 脳神経外科)

【背景】てんかん患者の8-17%で突然死がみられ、自律神経中枢の異常や迷走神経の直接刺激が原因といわれている。今回我々はてんかんの既往がない胆嚢穿孔術後の症例において突然の洞停止を伴う痙攣発作を繰り返し起こした症例を経験したため報告する。【臨床経過】症例は68歳男性。高血圧、十二指腸潰瘍(保存的加療)、睾丸腫瘍術後、慢性腎不全、うつ病、総胆管結石等の既往あり。総胆管結石に対してERCP施行後一旦退院となり、結石除去術施行のために再入院予定であった。腹痛、発熱を主訴に当院救急外来受診となり、急性胆嚢炎の診断にて精査加療目的に入院となった。入院後第9病日に胆嚢穿孔の診断にて緊急開腹下胆嚢摘出術施行。術後挿管下ICU入室となった。同日、突然の数秒間の洞停止が出現、自然消失するもその直後、急激な血圧上昇および強直性痙攣を認めた。プロポフォール急速投与にて血圧の低下および痙攣消失認めたが、その後も繰り返し強直性または強直間代性痙攣と同時に数秒間の洞停止や血圧の著明な変動がみられた。脳波検査にて左側頭部でのてんかん性異常波を認めたため、側頭葉起始のてんかんに伴う洞停止及び循環動態の変動と診断した。突然死を起こす危険があると判断しプロポフォールとミダゾラムの持続投与に加えレベチラセタムの投与を開始した。洞停止は認められなくなったがその後も痙攣を繰り返し、複数の抗痙攣薬を追加投与するも癲癇のコントロールに難渋した。第35病日、人工呼吸管理およびプロポフォール、ミダゾラム持続投与下にICU退室となった。【結論】側頭葉起始のてんかんは自律神経系に様々な影響を与えると考えられており、徐脈や洞停止を来した症例も報告されている。島皮質を巻き込む発作や島皮質の電気刺激によって不整脈が誘発されることが示されており、これらの症状は島皮質を介した自律神経支配による機序が推測されている。今回我々は、胆嚢炎に対する手術侵襲が契機に増悪したと思われる側頭葉てんかんによる洞停止を来した症例を経験した。SUDEP(Sudden Unexpected Death in Epilepsy)にも共通する看過できない病態であり、周術期に原因不明の徐脈や洞停止を来した症例に遭遇した際、側頭葉てんかんを考慮する必要があると思われた。