第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

中枢神経

[O103] 一般演題・口演103
中枢神経05

Sat. Mar 2, 2019 10:05 AM - 10:55 AM 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:齋藤 繁(国立大学法人群馬大学医学部附属病院麻酔科蘇生科)

[O103-2] くも膜下出血術後管理における五苓散の有用性

小林 智行1, 近藤 慎二2, 田邊 路晴2 (1.兵庫医科大学 救急災害医学講座, 2.山陰労災病院 脳神経外科)

【背景】脳神経外科においても漢方薬の有用性は、慢性硬膜下血腫に対する五苓散の使用をはじめ多数の報告がされるようになり、確立されつつあるといえる。脳神経外科医が扱う最も重要な疾患の一つが脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血である。特に重症くも膜下出血の術後管理においては、脳血管攣縮のみならずその他の障害因子や全身状態に対しての治療を行わなけれなならないと考える。脳血管攣縮に対する治療は、薬物治療、脳血管内治療などこれまでに多数の報告がある。我々もこれらの有用とされる方法を組み合わせて治療を行ってきたが、さらに漢方薬を併用するようになった。利水剤である五苓散は水分の出入りいずれにも作用し、アンバランスを調節する作用を持つため、脳浮腫に対する治療のみならず全身の水分バランスのコントロールに非常に有用と思われる。また小柴胡湯との合方である柴苓湯はフリーラジカル除去作用や炎症性サイトカイン抑制作用を持つとされ、脳虚血に対して有効な可能性がある
【 臨床経過】代表症例:56歳、男性。現病歴:夜間、突然の頭痛を発症し救急要請。来院時は傾眠、左片麻痺、CTにてびまん性のSAHおよび右側頭葉内側に血腫形成あり。CTAにて内頚動脈・前脈絡叢動脈分岐部の動脈瘤を認めた。入院経過:嘔吐頻回あり、昏睡状態、呼吸状態も不良、左片麻痺増悪あり、緊急開頭クリッピング術を施行した。術後は人工呼吸器管理および脳血管攣縮予防など全身管理を行った。漢方薬は五苓散7.5mg分3で使用。発熱が続き、意識混濁もみられたが、画像上も脳浮腫や明らかな症候性脳血管攣縮なく全身状態は改善し、左片麻痺も改善した。経験した症例のほとんどでグレードに関わらず画像上の血管攣縮や遅発性脳虚血を生じることはなかった。高齢の患者では誤嚥による肺炎や低栄養状態、心機能低下による胸水貯留などの合併症をきたしやすい傾向はあったものの、その多くは術前の状態と同等もしくは改善した.。正常圧水頭症の発症については明らかな効果を認めなかった。
【 結論】くも膜下出血術後、漢方薬を使用することで西洋薬のみではなしえない効果をしめす場合もあり、患者の状態は早期に安定し合併症も少ないように思われる。特に「水」に関連した合併症の多い術後管理については、利水作用をもつ五苓散や柴苓湯の使用は非常に有用である。特に高齢者における合併症の少なさは特筆すべきものがある。