[O103-5] 当院における高齢者頭部外傷の特徴について
【背景】65才以上の日本人は、過去40年間でほぼ4倍になり、人口の26%を占めている。頭部外傷患者も高齢化してきており、転帰の改善のためには高齢者の頭部外傷にも注意を払わなくてはいけない。【目的】若年者との比較から高齢者頭部外傷患者の特徴を評価し、転帰改善の介入の可能性を検討した。【方法】2012年1月から2017年12月までに当科で骨折・頭蓋内出血で入院した、慢性硬膜下血腫と来院時心肺停止例を除く急性期外傷症例を対象とした。後方視的に、対象の入院時GCS、年齢、性別、受傷機転、手術の有無、抗凝固薬、抗血小板薬の内服、採血結果、入院時CTでの所見、退院時GOS、転帰を決定した主たる因子を収集し、検討を行った。【結果】期間中、対象となったのは、739例であった。65才以上(A群)は422例、65才未満(B群)317例であった。性別は男性がA:62.3%、B:80.1%。受傷機転は、転倒転落が、A:46.4%、B:35.0%。抗凝固薬内服は、A:7.6%、B:1.3%。抗血小板薬は、A:16.8%、B:2.8%。CT所見では急性硬膜下血腫が、A:59.7%、B:31.2%でCT上確認された。また、手術は、A:12%、B:14.8%の症例で行われたが、高齢者では開頭術が78.7%から49%に減少した。転帰不良例を検討すると、若年者では頭蓋内損傷や合併する頸髄損傷などの頭蓋外損傷の重症度で転帰が主に決定していた。高齢者では頭蓋内損傷で転帰が決定するものがある一方で、肺炎など頭蓋外の合併症で転帰が決定する症例や外傷が原因で廃用が進み、ADLが低下する症例が散見された。【結論】当院においても、高齢者では抗凝固薬抗血小板薬内服により外傷に不利な出血性素因を持っている割合が高く、転倒転落で受傷が多く、急性硬膜下血腫が多く、転帰不良であった。年齢が関与する予備能の低下による全身の合併症や廃用で転帰が増悪していた。高齢者の頭部外傷の転帰改善のためには頭蓋内損傷のみならず、集中治療を行う早期から全身状態や廃用予防まで注意が必要と思われる。