第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 研究

[O104] 一般演題・口演104
循環 研究05

2019年3月2日(土) 14:00 〜 14:40 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:時田 祐吉(日本医科大学付属病院循環器内科)

[O104-3] 外傷性急性大動脈解離への治療戦略

古賀 智典, 押富 隆, 出田 一郎, 高志 賢太郎, 片山 幸広, 佐々 利明, 村田 英隆, 新冨 静矢, 上杉 英之 (済生会熊本病院 心臓血管外科)

【introduction】交通事故や転落などの高エネルギー外傷の際に、大動脈解離を伴うことが稀にある。高エネルギー外傷に伴う大動脈解離は、大動脈峡部に好発するためStanford type Bの形態をとることが多く、type Aは少数である。今回、当院で経験した外傷性急性大動脈解離の症例を提示し、その治療方針や遠隔成績について述べる。【material and method】2007年11月から2018年3月までに外傷性急性大動脈解離と診断を受け当院で入院治療を行ったのは19例であり、うち2例がStanford type Aで17例がtype Bであった。平均追跡期間は23.3ヶ月で、手術を行わずに保存的加療を行ったのは13例(type A 2例、type B 11例)、手術を行ったのは6例(type B 6例:open surgery 3例、TEVAR 3例)であった。これらについて、保存でみた場合と手術介入を行った場合とでイベント発生率や生存率などに差があるか検討した。●治療方針Type Aの場合は基本的に手術であるが、心嚢水貯留やARがなく、上行大動脈の偽腔が血栓で閉塞している場合は保存で経過をみることもある。Type B型の場合は降圧管理を中心として保存的に経過をみることが多いが、大動脈の断裂や仮性動脈瘤形成で切迫破裂を生じている場合、臓器虚血症状がある場合には手術を検討することになる。しかし発症機転から多発外傷を合併していることが多いため、脳挫傷や腹部臓器損傷などの致命的な合併症がある場合には、手術での出血リスクなどを考慮して手術は待機的となる場合もある。【result】患者の平均年齢は66.0歳(17歳-87歳)で、非外傷性大動脈解離に比べ若年傾向にあった。男性は12/19人(63.2%)。平均在院日数は37.2日であり、30日以内の死亡は保存群で2例に認めたが、手術群には認めなかった。死亡した2例は高度の脳挫傷や多発骨折、多臓器損傷を伴っており、手術には至らず入院当日に死亡となっている。遠隔期では、追加治療を要するような破裂、再解離、解離性大動脈瘤の拡大などの心血管イベントの発生はなく、全死亡は保存群が4例、手術群は0例であった。【conclusion】当院における外傷性急性大動脈解離に対する治療成績は良好な結果が得られており、その治療方針は妥当であったと考えられる。