第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

循環 研究

[O105] 一般演題・口演105
循環 研究06

2019年3月2日(土) 14:40 〜 15:40 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:西山 友貴(鎌倉病院)

[O105-2] 造影剤腎症とL-FABP腎疾患診断用バイオマーカーL-FABPを使用して

古里 遥, 山田 将志, 根津 知行, 石山 和磨, 千葉 晶奈, 沼里 淳平, 谷川 和泉, 佐藤 竜平, 林 直人 (大崎病院 東京ハートセンター)

【緒言】心臓カテーテル検査における造影剤性腎症(CIN)は、院内発生の急性腎障害(AKI)の10~13%との報告がある。当院ではCIN予防として術前の血清クレアチニン(sCre)値が高値を示した際、インジェクションシステムをアシストから三連活栓を用いた手押し造影に変更し造影剤使用量の低減に努め、術後は輸液量を増やすなどの防策をとっている。今回、腎疾患診断用バイオマーカーL-FABPを使用し、PCI施行後のCIN発症について検討したので報告する。【対象】2017年5月から11月までにPCIを施行した150例を術後L-FABPで分類した。(-)を示したN群145例と(±・+)を示したP群5例を比較検討した。統計学的検討はマン・ホイットニーU検定を使用した。【方法】術前項目は年齢、性別、身長、体重、血液検査データおよび推定糸球体濾過量(eGFR)とし、術後項目は血液検査データおよび造影剤使用量とした。L-FABPの測定は迅速診断を優先し定性測定で行い、術後4時間後に計測した。また、CINの判定にはAKINを用い、それぞれ発症率を算出した。【結果】結果はN群、P群の順に示し、AVG±SDとした。術前項目はsCr(0.79±0.22、5.46±4.31)mg/dl、BNPが(75.89±123.73、724.95±501.15)pg/dl、eGFR(78.06±20.16、14.38±8.48)ml/min/1.73m、だった。術後項目はsCr(0.78±0.20、5.35±4.23)mg/dl、造影剤使用量(120.72±55.02、90±14.87)mlで、有意差が得られた項目はsCr、BNP、eGFRだった。CIN発症は150例中1例(0.6%)で、P群で発症が認められた。【考察】P群は全ての患者においてsCr、eGFRの値からCKD患者である事が示唆され、これによりL-FABPが陽性になったことが考えられる。また、CIN発症率は、0.6%と低く、当院のPCI治療プロトコール及び予防策はCKD患者の際にも問題ないと云える。本研究のCIN症例は、通常より造影剤使用量も少なかったにも関わらず発症している。CIN予防策は、造影剤使用量の削減の他に補液によるwashoutが挙げられるが、入院日数が短いPCI施行後は早期に追加補液の検討が必要となるため、eGFR、sCrより早期に反応するL-FABPでの評価が必要だと考える。また、L-FABPはPEAKを迎えるのが4時間後と24時間後という文献があるため、採尿タイミングが課題となった。【結言】L-FABPはCIN発症予測と予防に有用である可能性が示唆された。