第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

患者管理

[O108] 一般演題・口演108
患者管理01

2019年3月2日(土) 08:45 〜 09:45 第14会場 (国立京都国際会館1F Room G)

座長:齊藤 洋司(島根大学医学部麻酔科学)

[O108-3] 心臓血管外科手術後の嚥下機能評価の効果

古市 吉真, 安達 義明, 加藤 英子, 小宮 達彦, 島本 健, 野中 道仁, 松尾 武彦 (倉敷中央病院 心臓血管外科)

背景:術後の誤嚥性肺炎は高齢者では時に致死的となり、食事開始前の嚥下機能評価は誤嚥性肺炎予防のために重要である。目的:2016年4月から、脳梗塞などがない場合にST介入のために嚥下機能評価に嚥下内視鏡(videoendoscopy:以下VE)の評価が必要となった。また近年ST介入症例が増加した背景があり、同時期に当院心臓血管外科集中治療室(Cardiovascular Care Unit:以下CCU)では、嗄声の有無や看護師、医師で行う飲水テストの評価でST介入の必要性を判断することとした。開始前後でのST介入者の変化と、誤嚥性肺炎の発症率を比較した。方法:2015年1月から2018年7月までの心臓、大血管、末梢血管手術を対象とし、2016年4月前後で二群にわけ、ST介入の割合、ST介入者でのVE評価割合、嗄声の割合、声帯麻痺の発生率、誤嚥性肺炎の罹患率を比較した。結果:2015年1月から2016年3月まで(前期)CCU-S入室患者824名中ST介入は130名(16%)、2016年4月から2018年7月まで(後期)のCCU-S入室患者数は989名でST介入者は103名(10%)と有意に減少していた(p=0.001)。患者背景(順に前期、後期)は年齢は71.0±12.4歳、70.4歳±12.1歳、術前腎機能、術前Bil.値、冠危険因子などに差はなかった。弁膜症手術36%、40%、CABGは前後期ともに16%、急性大動脈解離手術が4%、6%と後期に多かった。緊急手術は13%、15%と差はなかった。CCUにおけるBIPAP使用は10%、8%、CHDF使用8%、7%、IABP使用3%、3%、PCPS使用1%、1%と差はなかった。誤嚥性肺炎は全体で2.1%であり、前期1%、後期3%で後期にやや多かった(p=0.075)。ST介入者の患者背景は年齢75.5歳、75.1歳、腎機能、術前Bil.値、冠危険因子に差はなかったが、術式はステントグラフト症例が14%から5%へ減り、急性大動脈解離手術が12%、18%と増加し、大血管手術が24%、39%と後期に有意に多かった(p=0.015)。またEuroscoreは前期15.3に対して後期20.4と有意に高かった(p=0.009)。術後嗄声を認めたものは12%、25%と増加し、VE評価は前期3%から後期52%まで増え、声帯麻痺の診断も3%から20%まで増加した。誤嚥性肺炎は8%、21%であった(p=0.007)。ST実施日数は11.4±17.4日、15.3±16.8日と後期で長い傾向があった(p=0.088)。結論:ST介入者数は抑制できていた。重症患者により限定することができていたが、誤嚥性肺炎の発症率は抑えることはできなかった。