[O108-6] 収益面から見た長野県における周産期小児病院間搬送の実態-永続可能な事業を目指して
【背景】当院は長野県の周産期及び小児における唯一の三次医療機関で、専属の運転技士を配置したドクターカーを所有している。県内を中心に集中治療を要する患児について、依頼元病院の要請により依頼元病院まで患児を迎えに行く病院間搬送(以下、迎え搬送)を積極的に実施している。全国で4番目に広大な長野県では移動に多くの時間を要し、かつ、地方独立行政法人の一病院として収益が重要視される中、当院が開院以来単独で実施している本事業がどの程度収益に寄与しているかは不明だった。【目的】当院のドクターカーを用いた迎え搬送の診療報酬やドクターカーの運用に係る諸経費を分析し、今後の方向性を検討する。【方法】医科診療報酬が改定された平成28年4月から平成30年3月まで、当院のドクターカーを用いた迎え搬送について、保険診療報酬明細及び人件費や事務経費から収支を後方視に検討した。なお、医師や看護師の人件費等は算出が困難のため検討から除外した。【結果】迎え搬送の合計は581件で、その内生後28日未満の新生児(以下、新生児)は324件、6歳未満の乳幼児(以下、乳幼児)は186件、6歳以上は68件だった。往診料の時間加算に係る往診の時間帯は、緊急(8時から13時)が114件、夜間 (6時から8時及び18時から22時) 及び休日(日曜日及び祝日)が173件、深夜(22時から翌6時)が105件だった。往診時間の中央値は1.5時間(1-12.5時間)で、その内1時間以内は117件だった。診療報酬について、救急搬送診療料の合計は17,435,000円、中央値は35,000円、その内新生児の合計は11,200,000円、乳幼児の合計は4,995,000円、6歳以上の合計は1,240,000円だった。往診料及び救急搬送診療料の合計は25,817,650円、中央値は44,200円だった。運転技士に関する運行業務委託費、燃料代や道路運送車両法の基づく継続検査等を含む車両修繕費の合計は42,017,894円だった。診療報酬から諸費用を差し引いた収支はマイナス16,200,244円だった。【結語】現行の保険診療報酬制度の下では病院の収益に寄与していなかった。永続可能な事業とするため、診療報酬の更なる改定や、ドクターヘリと同様に自治体や国による運航経費等の補助が可能になる新たな法整備が必要である。