第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

患者管理

[O108] 一般演題・口演108
患者管理01

2019年3月2日(土) 08:45 〜 09:45 第14会場 (国立京都国際会館1F Room G)

座長:齊藤 洋司(島根大学医学部麻酔科学)

[O108-7] post-ICUの10年~呼吸管理特化病棟の課題~

高松 道生 (長野県厚生連 鹿教湯病院 post-ICU)

【背景】人口の高齢化と救急搬送事例の増加、蘇生法の普及と進歩等の要因により救命事例の増加が予想される。加えてCOPDを中心とした慢性呼吸不全例の増加も見込まれるため、weaning困難な長期呼吸管理対象例への対応が重要な課題である。【目的】呼吸管理に特化した病棟運営の経験から、今後必要とされる課題を検討した。【方法】呼吸管理病棟として発足した鹿教湯病院post-ICUにて長期呼吸管理を行った58例の経過と転帰について、原疾患及び死因に焦点を当てて検討した。【結果】2008年9月、医療療養病棟の一部に5床で発足したpost-ICUは2012年5月に一般病棟に増床移転し、2014年5月に障害者施設等一般病棟に転換された。この10年間で58例を受け入れたが、救命救急センターからの症例が34例、58.6%を占めている。そのうち脳血管障害による重度意識障害2例を除く56例に呼吸管理を行った。全症例の内訳は男性40例、女性18例で、平均年齢はそれぞれ68.0歳、64.2歳である。呼吸管理症例56例の呼吸管理期間は最短で2週間、最長で117ヶ月であり、平均は34.0ヶ月であった(2018年8月31日現在)。呼吸管理を要した原疾患は心停止蘇生後低酸素脳症に伴う中枢性換気障害が最も多く22例(39.3%)であり、次に慢性呼吸不全と神経難病がそれぞれ9例(16.1%)で、以下、脳血管障害8例(14.3%)、頚髄損傷5例(8.9%)、その他3例(5.4%)であった。蘇生後症例の多さは救急医療体制の後方組織としての長期呼吸管理部門の必要性を示しており、同時に急性期医療機関との連携の重要性を示している。死亡例は36例(62.1%)で、死因は肺炎などの呼吸器疾患9例(25%)、悪性腫瘍6例(16.7%)、敗血症5例(13.9%)、心疾患・腎疾患・消化器疾患がそれぞれ4例(11.1%)、その他4例(11.1%)となっている。肺炎と敗血症をまとめれば13例(36.1%)の死因が感染症となり、人工呼吸器関連肺炎を含む院内感染対策の重要性を示している。【結論】救命救急センターを中心とする急性期医療機関の後方病床としてのpost-ICUの意義は、今後さらに重要性を増して行くものと考えられる。また、急性期医療機関からの円滑な患者受け入れには、post-post-ICUとも呼ぶべき呼吸管理療養病棟によるpost-ICU患者の受け入れが求められる。転帰に関して言えば、長期呼吸管理を行って行く上で感染症に対するさらなる配慮が求められる。