第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

呼吸 症例

[O11] 一般演題・口演11
呼吸 症例04

Fri. Mar 1, 2019 2:50 PM - 3:50 PM 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:今中 秀光(宝塚市立病院ICU)

[O11-7] 急性心不全に対しネーザルハイフローの使用が有効であったanorexia nervosaの1例

高谷 悠大, 角田 洋平, 堤 貴彦, 邑田 悟, 篠塚 健, 下戸 学, 柚木 知之, 趙 晃済, 大鶴 繁, 小池 薫 (京都大学 初期診療・救急科)

【背景】anorexia nervosa(AN)は精神疾患の中で死亡率が高く、低栄養に基づく様々な合併症を起こす。近年ネーザルハイフロー(NHF)は、救急・集中治療領域で、呼吸不全に対する有効性が注目されているが、ANでの使用報告はほとんどない。今回、急性心不全を発症し、NHFで治療したANの症例を報告する。【臨床経過】22歳男性。小学校4年時にANを発症し、以降、頻回の入退院を繰り返していた。今回、極端な摂食量低下による低栄養状態になり、精神科病棟に入院となった。入院時、身長146.6 cm、体重19.2 kg、BMI 8.9と著明なるいそうを認めた。入院第7病日に尿路感染及び消化管出血を合併したため、当科に転科となりICUに入室した。抗菌薬治療、内視鏡的止血術により全身状態が安定したため、第10病日に一般病棟に転棟した。その後、NICEガイドラインを参考に中心静脈栄養を行っていたが、尿量低下、急性腎障害、低リン血症、末梢の浮腫や多量の胸腹水貯留を認め、リフィーディング症候群の合併が考えられた。輸液負荷及びアルブミン製剤の投与後も腎障害は進行し、第16病日に血液透析を導入した。第19病日、右上肢の強直間代性痙攣が起こったため、ジアゼパム5 mgで鎮痙した。意識障害が続くためICUに再入室とした。頭部CTで器質的病変を認めず、意識の改善を確認し、第20病日に一般病棟に転棟した。しかし第22病日、呼吸苦が増悪しSpO2低下を認めた。BNP 2967 pg/mLと高値であり、胸部X線で肺うっ血像を認め、うっ血性心不全と診断した。リザーバー付き酸素マスクを10L/分で投与したが、受け入れられず外すために酸素化を維持できなかった。次にNHFを60%酸素60L/分で開始したところ、拒否することなく酸素化の維持が可能となり、心不全の管理のためICUに再々入室とした。入室時のAPACHE2スコアは19、SOFAスコアは8であり、体重30.5 kgと著明な増加を認めた。動脈血液ガス分析では、NHF (FiO2 0.6)下でpH 7.4、PaCO2 30.9 mmHg、PaO2 54.3 mmHgと1型呼吸不全を認めた。CHDFを開始し100mL/hで除水したところ、呼吸状態は徐々に改善し、ICU入室2日目にはNHFを離脱できた。5日目には酸素投与及びCHDFを終了し、6日目から間歇的血液透析に移行し、8日目に一般病棟に退室とした。その後透析を離脱し、入院第34病日に精神病棟に移動となった。【結論】NHFは忍容性が高く、ANのような治療への抵抗が強い症例の呼吸不全において有用であると考えられた。