[O110-2] ICU施設間連携が奏功し人工呼吸器離脱ができた胸部ステントグラフト感染症の1症例
【背景】重症患者に対する人工呼吸器管理は長期に及ぶことがあり、呼吸器離脱困難な場合は一般病棟への転棟ができず長期ICU管理を要す。今回我々は、ステントグラフト(SG)感染症に対する長期集中治療の後、ICU-ICU間の直接施設間転院を行い人工呼吸器を離脱することができた一症例を経験したので報告する。 【臨床経過】77歳男性。慢性心不全(EF 44%,TR 3 TRPG=34mmHg)、慢性腎不全(Cre 1.8 mg/dl)あり。下行大動脈瘤60mmに対し胸部大動脈瘤SG内挿術を施行1年後に発熱、CRP(24.6 mg/dl)の上昇を認め、CTおよびGaシンチにてSG感染と診断し精査加療目的に当院転院となった。2週間の抗生剤加療によりGaシンチの集積は消失し、炎症反応も改善したが、抗生剤による薬剤性腎障害のため急性腎不全(Cre 4.5 mg/dl)に陥った。間欠透析を開始したが心不全、肺水腫を認めたためICUに入室。 NYHA 3、APATCHE-2 14。ICU入室1週間後呼吸不全が生じ人工呼吸器管理となり持続血液浄化療法(CRRT)へ移行。細菌性肺炎も合併しICU入室5週間後気管切開、9週間後に胃瘻を造設した。気管支肺胞洗浄(BAL)の結果はリンパ球優位で感染症後の器質化肺炎と診断。右心優位の難治性心不全により循環が極めて不安定で間欠透析が不可能でありICUから一般病棟への転棟が困難であった。長期臥床による廃用性筋萎縮が進み長期リハビリテーションを要すが、本人のリハビリ意欲が低下しており、当院は自宅から遠方なため家族のサポートも得られやすい紹介元病院ICUでの治療を進める方針とし、ICU入室18週間後ICU-ICU施設間転院を行った。転院後期待通りリハビリ意欲も高まり、経管栄養による栄養状態が改善するにつれ循環動態も安定した。ICU間転院4週間後から間欠透析に移行でき、転院8週間後に当院腎臓内科にて透析シャント作成した。呼吸器のweaningも進みICU間転院4週間後に離脱した。酸素投与の必要のないスピーチカニューレ管理および離床もすすみ監視下での数十mの歩行が可能となりICU間転院8ヶ月後に他院にリハビリ転院となった。 【結論】長期ICU治療となった重症患者でも、施設間のICUで連携することにより慢性呼吸器管理からの離脱を図ることができた1例経験し施設間連携、特にICU間連携の重要性を再認識した。