第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

患者管理

[O110] 一般演題・口演110
患者管理03

Sat. Mar 2, 2019 10:45 AM - 11:45 AM 第14会場 (国立京都国際会館1F Room G)

座長:齊木 巌(東京医科大学病院 麻酔科学分野 集中治療部)

[O110-4] 寒冷条件での市民マラソン大会についての報告

堀田 和子1, 黒岩 忠司2 (1.湘南鎌倉総合病院, 2.山北徳洲会病院)

【はじめに】市民マラソンは年間約1500レースが開催され、12から2月の冬季期間だけでも約180レースが行われる。マラソン大会において、心肺蘇生に対する救護活動や、暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)を用いた、熱中症対策の報告は散見されるが、寒冷条件での傷病者の報告や救護活動の報告は少ない。新潟県村上市の笹川流れマラソンは、ハーフマラソンだが歴史ある大会である。2018年4月8日に開催された第32回大会では気温が低く、悪天候で傷病者が例年より増加し、救護活動で混乱が生じた。反省点と対応策を検討した。【事例】参加エントリー1779名。大会当日、最低気温2.1度、風速8m/秒、雹雨。レース開始後、約1時間ごろから、コース折り返し地点を過ぎたところで、歩行困難となるランナーが多くみられた。救護所に搬送された傷病者はのべ30名に及んだ。傷病者は下肢痙攣や筋痛を呈し、風雪雨と低気温で震えが止まらない状態であった。1名が筋痙攣、脱水症にて医療機関に救急搬送。これまでの大会で低体温症の傷病者が発生したことはなかったため、毛布や保護シート、加温飲料などを準備しておらず救護活動に困難をきたした。医療従事者は医師1名、看護師3名、保健師1名、救急救命士1名であった。傷病者が同じ時間帯に殺到したことからトリアージなども必要であったが、医療従事者の配置などから十分な対応ができなかった。【考察】例年、傷病者は軽外傷が数名のみである。今年度も資機材は外傷セットやAEDなどのみであった。気温は同様に低い大会もあったが、雹雨が悪条件となった。4月の大会であり、県外からの参加者は、防寒準備をしていないものが多かった。多くのランナーは寒さのため飲水を控えており、脱水症状を呈していた。低体温は低血糖も引き起こしやすく、傷病者の中には低血糖を合併していたものもいたかもしれない。寒冷条件でのマラソン大会では、通常の気象条件での熱中症対策以外に、水分補給や、防寒対策などのランナーへの啓蒙が必要である。救護体制においては、血糖測定装置や深部体温計、加温した経口飲料などの準備も必要である。気候条件に応じた対策がもとめられる。市民マラソンでは携帯電話のアプリなどを用いて主催者側から参加者へ注意を促すなどの工夫が必要であると考える。