[O110-5] 悪性黒色腫に対するニボルマブ投与により筋炎合併重症筋無力症を発症しICU管理を行った 1 症例
【背景】ニボルマブは免疫チェックポイント阻害薬で抗がん剤の一つである。ニボルマブの副作用として筋無力症を生じることがこれまでに数例報告されているが,集中治療室管理を行うに至る症例は少ない。今回,悪性黒色腫に対するニボルマブ投与により筋炎合併重症筋無力症を生じた症例を当科ICUにて管理したので報告する。【症例】症例は50歳台女性。既往歴として2012年に抗アセチルコリン受容体抗体高値の胸腺腫に対して拡大胸腺摘出,放射線治療を行ったが,周術期を含めて重症筋無力症の発症はなかった。本年3月下旬に視野狭窄を主訴に眼科を受診した。右下 1/4 半盲を認め,頭部CTおよびMRIにて,左後頭葉・頭頂葉に腫瘍性病変を認めた。4月には,腫瘍摘出術を施行し,悪性黒色腫の診断であった。続いて,右乳房の黒色結節摘出術を行い,原発巣の特定と組織診断が確定した。7 月には、ニボルマブ (3mg/kg) が開始され,2度投与された。初回投与から 13 日目にクレアチンキナーゼ (CK) が278 IU/L に上昇した。以後漸増し,49日目まで異常高値を示した。(最大値 15007 IU/L(20day))。19日目以降で,右眼内転障害,複視,眼瞼下垂,筋力低下が出現し,血中抗 Ach 抗体が陽性を認め,ニボルマブによる筋炎合併重症筋無力症と診断された。22日目には呼吸困難を認めたため,ICUに入室し,気管挿管を行った。【経過】ニボルマブの初回投与から19日目のQMGスコアは14点であった。ICU入室時には 24点と進行した。免疫グロブリン静注,ステロイドパルス,血漿交換を開始し,CKは緩やかに漸減傾向となった。人工呼吸管理においては,CPAPモードを使用し自発呼吸による呼吸管理を目指したが,容認できずに,assist/control を要した。横隔膜エコー上,横隔膜の菲薄化と収縮力低下が目立った。筋力回復は認められず,呼吸器離脱は困難と判断し43日目に気管切開術を行った。50日目に CKは概ね正常化し,一般病棟に転床した。現在は,血漿交換療法を断続的に行い,人工呼吸器からの離脱訓練を行っている。【まとめ】今回,ニボルマブによる筋炎合併重症筋無力症を生じた 1 例のICU管理を経験した。