第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

患者管理

[O110] 一般演題・口演110
患者管理03

2019年3月2日(土) 10:45 〜 11:45 第14会場 (国立京都国際会館1F Room G)

座長:齊木 巌(東京医科大学病院 麻酔科学分野 集中治療部)

[O110-6] 航空機動衛生隊“機動衛生ユニット”にて長距離患者搬送をおこなった小児4症例のまとめ

差波 新1, 藤原 直樹1, 神納 幸治1, 加藤 匡人1, 岸本 健寛2, 山口 大介2 (1.沖縄県立南部医療センター・こども医療センター, 2.航空機動衛生隊)

【初めに】沖縄県では、2006年4月に小児専門医療施設が開設され、以前は本土へ紹介されていた症例が沖縄県で治療が完結できるようになったことから、搬送が必要となる症例は減少傾向にある。一方で、移植を中心とした、高度かつ特殊な専門性を要する医療を要する場合には、本土への長距離患者搬送を行っている。搬送が必要である症例は重症度が高く、より高度な管理を行うことができる航空機動衛生隊による搬送を2016年より4例経験したのでこれを報告する。【症例】症例は2か月から1歳3か月の4例。心移植を前提とした補助人工心臓(VAD)装着のため2例の搬送を行い、一例はECMO装着下での搬送となった。3例目は極形ファロー四徴症、主要肺動脈大動脈起始症を合併し、Unifocalizationを目的とした搬送。4例目は肝芽腫術後の肝不全に対する生体肝移植を目的とした搬送であった。いずれも重症度が高く、循環動態は不安定であったことから、鎮静挿管下での搬送を行った。バックボードに患児、シリンジポンプ、搬送用人工呼吸器等を乗せた形でパッケージを行った。前日までにシミュレーションを行い、搬送中のリスクについて検討を行った。また、搬送を担当する航空機動衛生隊と綿密に情報交換を行った。当院からは小児集中治療科医を中心に、必要に応じて主治医、臨床工学技士が同乗した。機動衛生ユニットの利用により、十分なスペースの確保、豊富な資機材、搬送に特化した人員が担保され、高度な機内医療の継続が可能となり、より安全な搬送を実現することができた。搬送に関連する有害事象として、低血圧、不整脈、ECMOの回路トラブルなどが認められたが、いずれも、航空搬送に起因するものではなく、それぞれ迅速、かつ適切に対応が可能で、児に大きな影響を及ぼさなかった。【まとめ】搬送中、限られた医療資源の中で、集中治療を継続することが可能な搬送環境を構築する必要がある。今後、移植医療の発展とともに、より重症かつ複雑な搬送事案が増えることが予想され、搬送シミュレーション、チェックリスト作成、チーム教育等を糖して、より安全な搬送を実現する必要がある。長距離患者搬送自体はまれであり、経験の共有が重要であると考えられた。