[O110-7] 多数傷病者事故発生時のICU運用について-津久井やまゆり園多数傷病者事案から得られた経験-
【背景】地震など大規模災害時のICUの災害対応については、病院BCP(Business continuity planning)に記載されている施設も多い。一方で列車脱線事故などの多数傷病者事故(Mass casualty incident:MCI)やテロを含むCBRNE災害(Chemical Biological Radiological Nuclear Explosive)への対応計画は事案の発生頻度からも十分とは言えない。これらの災害は局地的なことが多く、体制が整う前に特定の医療機関への傷病者受診、搬送が集中することが予測される。収容先医療機関では短時間での急激な医療需要の増大に対する事前計画を練っておく必要がある。2016年に起きた津久井やまゆり園多数傷病者事案ではテロ事案に準じた対応を必要とし、当院では14名の刺創による傷病者を受け入れた。当院ではMCIへの事前計画は無かった。その中で救急外来、手術室のマネージメントに加え、入院先であるICUの体制確保に際し貴重な経験を得られたため報告する。
【経過】2016年7月に起きた津久井やまゆり園多数傷病者事案では45名の傷病者が発生し、26名が周辺医療機関へ搬送された。当初は傷病者数が想定できなかったため、当院は第一報から約2時間後に災害対策本部を立ち上げた。その後、受け入れ体制を構築し合計14名を収容した。内訳はICU入院5名、救急病棟入院が4名、外来転院3名、帰宅2名であった。当初の救急ICU空床は3床(全20床)であり、事案発生後の当直帯に5名を病棟に転出、これらは6時から8時の間に行われた。同日は本事案と別に救急ICUへの入院が3名いた。救急ICUでの病床調整が難しくなったため、他の医療機関に計4名の傷病者が転院した。今回は転院と病床調整で対応ができ、人工呼吸器を含めた機械的サポートを必要とする患者の一般病床への退出も無かった。救急ICUでは看護師の増員をせずに対応できた。
【結論】入院、転院も含め円滑なコントロールが出来た要因としては、災害対策本部を設置し、「災害モードへのシフト」を行い、指揮命令系統の一元化、災害発生の共有が挙げられる。一方で実務上は病床調整以外にも入院や転出に伴う指示出しなどを考える必要があった。
また空床確保のために一般病棟で重症患者の管理を行うよりは、他の医療機関への転院を考える方が望ましい。
MCI、CBRNE災害では一医療機関にかかる負荷が大きいため、ICUなどの医療資源の共有も含め、一医療機関のみならず地域でも事前計画することが大切である。
【経過】2016年7月に起きた津久井やまゆり園多数傷病者事案では45名の傷病者が発生し、26名が周辺医療機関へ搬送された。当初は傷病者数が想定できなかったため、当院は第一報から約2時間後に災害対策本部を立ち上げた。その後、受け入れ体制を構築し合計14名を収容した。内訳はICU入院5名、救急病棟入院が4名、外来転院3名、帰宅2名であった。当初の救急ICU空床は3床(全20床)であり、事案発生後の当直帯に5名を病棟に転出、これらは6時から8時の間に行われた。同日は本事案と別に救急ICUへの入院が3名いた。救急ICUでの病床調整が難しくなったため、他の医療機関に計4名の傷病者が転院した。今回は転院と病床調整で対応ができ、人工呼吸器を含めた機械的サポートを必要とする患者の一般病床への退出も無かった。救急ICUでは看護師の増員をせずに対応できた。
【結論】入院、転院も含め円滑なコントロールが出来た要因としては、災害対策本部を設置し、「災害モードへのシフト」を行い、指揮命令系統の一元化、災害発生の共有が挙げられる。一方で実務上は病床調整以外にも入院や転出に伴う指示出しなどを考える必要があった。
また空床確保のために一般病棟で重症患者の管理を行うよりは、他の医療機関への転院を考える方が望ましい。
MCI、CBRNE災害では一医療機関にかかる負荷が大きいため、ICUなどの医療資源の共有も含め、一医療機関のみならず地域でも事前計画することが大切である。