第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

一般演題(口演)

教育

[O111] 一般演題・口演111
教育01

Sat. Mar 2, 2019 8:45 AM - 9:35 AM 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:小寺 利美(滋賀医科大学医学部附属病院看護部 看護部管理室)

[O111-5] 小児集中治療現場でのコミュニケーション技術に関するシミュレーション教育の必要性

笠木 実央子1, 菊地 祐子2, 秋山 類1, 堀川 慎二郎1, 荻原 重俊1, 小谷 匡史1, 居石 崇志1, 齊藤 修1, 清水 直樹1 (1.東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部 集中治療科, 2.東京都立小児総合医療センター 子ども・家族支援部 心理・福祉科)

【背景】集中治療現場では、終末期医療や医療事故など、高難易度のコミュニケーション(difficult communication; DC)の必要性にしばしば直面する。一方、医療従事者はそれに少なからず不安を抱えながら実践していることも多いが、その教育プログラムは世界的にも少ない。
【目的】海外の小児集中治療現場でのコミュニケーション技術に関するシミュレーション教育をもとに、当院における教育体制を計画し、その実現可能性と必要性を検討した。
【方法】当該教育体制を計画するにあたり、その期間と内容を検討した。実施期間としては年間プログラムとした。全員参加でのシミュレーションは困難なため少人数で実施し、参加者の承諾を得た上で動画撮影を行った。シミュレーション終了直後にhot debriefingを行い、後日また別に、より多い参加者のもとで動画供覧の後にcold debriefingを行う形式とした。家族役としては、家族支援部門ソーシャルワーカーの協力を得た。教育内容としては、(1)医療事故、(2)救命不能、(3)脳機能停止、(4)臓器提供オプション提示、(5)剖検の家族説明の各項目とした。複数の小児集中治療医に対して、これら各項目のDCに対する経験・不安・自信等につき、5段階のLikert scaleを用いたアンケート調査を行った。
【結果】上記計画の実現可能性は確認され、アンケート調査にはアテンデイング7名(A)、フェロー9名(F)の計16名が回答した。年齢・医歴・PICU経験年数の中央値は各々36歳・10年・2年であった。DCにかかるベッドサイド・ティーチングまたは講義による教育は半数が受けていたが、シミュレーション教育は2名(12%)であった。医療事故・救命不能・剖検の説明は7~8割以上が経験していたが、脳機能停止・臓器提供オプション提示の経験はFで各々2名(22%)・0名(0%)であり、Aでも全員ではなかった。DCに対するFの自己評価は海外先行研究結果と同等であった。DC全般に対する準備不足と不安、ことに脳機能停止・臓器提供の説明に対する不安は、Aと比較してFに有意に強い傾向にあった(p<0.01)。
【結論】小児集中治療におけるDCの経験と教育の機会は不足している。経験の補完と不安の軽減を目的としたシミュレーション教育体制構築の実現可能性と必要性が確認された。