[O112-4] 当施設における全職員向け心肺蘇生講習会の現状調査と課題―QCPRによる自己修正の有用性―
【背景】新しい心肺蘇生ガイドライン2015(G2015)が発表されて約3年が経過し、本邦でもG2015に準拠した各種の心肺蘇生講習会が開催されている。G2015ではCCF(胸骨圧迫時間比)を60%以上にすることが推奨されており、この勧告を実現すべく、フィードバック機能付きの各種マネキンが蘇生コースで導入されている。【目的】病院機能評価受審に先立ち実施した全職員向け心肺蘇生講習会において、フィードバック機能付きマネキン(レサシアンQCPR)を代表とするシミュレータが、実演者に及ぼす影響(特に自分自身によるスキルの修正能力)について検討した。【方法】平成30年6月から10月までの期間、平日の昼と夕の勤務時間内に、約50分間の心肺蘇生講習会を実施した。事務員や委託業者も含む全職員が対象となるため、講習会では人工呼吸を廃し「Family & Friendsコース」のDVDを主に使用し、そこにAED実習を組み合わせる方式とした。インストラクターは筆者の他にドクターカー要員の救急救命士2名。QCPR は2体を使用、各々受講生数を3名~4名の構成とした。胸骨圧迫のスキルでは、リアルタイムに胸骨圧迫波形を前方のスクリーン上に投影しながら、Hands only CPRを1分間実施した。コース最後は、受講生の背景や職歴に合わせた状況設定(通勤途中や仕事場近くでの急変を目撃する等)を行い、3名1組のチームとなってAEDを含めた約5分間のスキル実習を行った。コース後、アンケート調査を行った。【結果・考察】受講者総数は、976名であった。蘇生講習会の初期段階では、胸骨圧迫の深達度は、平均で男性が55mm、女性が46mmであったが、最後のチーム蘇生では特に女性において圧迫深度が深くなる傾向がみられた。リコイルに関しては各人の“癖”が出やすく、いったん修正してもリコイル不十分のマークが出る傾向にあった。Hands only CPRコースでは胸骨圧迫の時間が15~18秒から60秒に伸びるため、実演者はスクリーン上の圧迫波形を見ながら、圧迫位置や圧迫深度・リコイルの問題点等を、自ら修正することがある程度は可能となり、アンケート調査でも満足度が高かった。【結語】受講生が自分の胸骨圧迫の手技上の問題点が可視化されることで得られる「気づき」の意義は大きく、自らの修正によって正しい胸骨圧迫が行えるようになったとの自信は、心肺蘇生法を身近なものとして普及させるうえでポジティブに作用するものと推察された。