第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

教育

[O112] 一般演題・口演112
教育02

Sat. Mar 2, 2019 9:35 AM - 10:15 AM 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:奥村 将年(愛知医科大学 麻酔科学講座)

[O112-5] ICU中堅看護師の「気づき」を活かすナッジをベースとした人材育成

松谷 やすこ, 岡田 裕子, 露無 明美, 渡邊 仁美 (鳥取大学医学部附属病院 高次集中治療部 4A)

実践目的: T大学病院ICUのスタッフは、JNAクリニカルラダーレベル3は40%、ICU専門ラダー中堅45%と中堅看護師は半数以上を占めている。ICUの中堅看護師は、専門知識を発展させるため、臨床経験で得た知識を、理論に基づいて科学的に検証し実践的知識を拡大していく必要性がある。そのため、ICUの中堅看護師を教育する方法として状況把握能力が最も要求される事例検討が提唱されている。今回中堅看護師が患者の変化の「気づき」を発見する方法としてナッジ(現状維持を好み不完全な選択に導かれやすいことを理解したうえで、そっと促す様に人に適切な選択をさせる仕組み)を人材育成に取り入れた。中堅看護師の「気づき」に対し臨床推論を用いた事例検討をし、特定の状況下で最良の判断に基づく中堅看護師の行動を起こすプロセスを明確にしたので報告する。
実践期間:2017年10月~2018年8月
実践方法:中堅看護師の「気づき」の発見方法:ICU入床患者の術後急変、合併症を発症した事例に対し中堅看護師の症状アセスメントを、勤務終了デブリーフ時に共有した。事例担当の看護師に中堅看護師の「気づき」を伝え事例検討の準備を行った。
臨床推論を用いた事例検討方法:臨床推論の6step(step1:バイタルサインの観察、step2:なぜこの状況がおかしいのか、step3:異常のメカニズム、step4:このとき考えられる状況を絞り込む、step5:確定するための情報を集める、step6:治療と起こることを予測してナースとしての行動を考える)を活用した。
実践結果:中堅看護師の「気づき」:症状アセスメント内容は、肝不全の凝固機能の低下、心電図のST変化、脳神経疾患患者の胃痛、術前からの便秘、呼吸心拍の変化、心筋梗塞の初期症状(嘔気)、食道術後の痰喀出困難であった。以上の7つの「気づき」を臨床推論事例として分析した。この7事例のうち、中堅看護師の行動を起こすプロセスを明確にできた事例は4事例であった。3事例はstep3:異常のメカニズムまで推論できたが、行動を起こすプロセスまでには至らなかった。
考察:中堅看護師の行動を起こすプロセスを明確にできた事例は、重篤な合併症へと陥る前に、その緊急性を見極め医師に報告相談できていた。臨床推論のStep4:このとき考えられる状況を絞り込む段階で、症状アセスメントである「気づき」を病態関連図で根拠づけ視覚化する作業を、中堅看護師を中心に少人数活動が人材育成には重要である。