第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄

[O115] 一般演題・口演115
鎮痛・鎮静・せん妄02

2019年3月2日(土) 14:00 〜 15:00 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:戸部 賢(国立大学法人群馬大学医学部附属病院集中治療部)

[O115-2] 心臓血管外科手術後のせん妄発症の有無が退院後に与える影響について

山下 遊平1, 生須 義久1, 高柳 麻由美1, 中野 晴恵1, 岡田 修一2, 長谷川 豊2, 山田 靖之2, 江連 雅彦2, 中出 泰輔3, 内藤 滋人3 (1.群馬県立心臓血管センター リハビリテーション課, 2.群馬県立心臓血管センター 心臓血管外科, 3.群馬県立心臓血管センター 循環器内科)

【背景】J-PADガイドラインにおけるせん妄の治療は,有効な薬物は示されていない一方で,早期リハビリテーションは強く推奨されている.当院においても心臓血管外科手術後に対して早期リハビリテーションは実施され,せん妄患者の手術後在院日数は非せん妄患者のそれと同様の成績を収めている.せん妄はまだ不明な点が多いため発症要因等を検討する研究は近年増えてきたが,せん妄を発症した患者の退院後の生活について報告をする研究は皆無に近い.
【目的】今回我々は,心臓血管外科手術後にせん妄を発症した患者は退院後の身体活動に影響を与えると仮説を立て,せん妄患者の退院後の生活状況について調査を行った.
【方法】 2014年9月から2015年4月に当院にて心臓血管外科手術を待機的に施行した患者88名(男性60名,65.6±11.9)を対象とした.対象患者へアンケートを郵送し,同意を得て回収できたものを分析対象としコホート研究を行った.手術後にせん妄が発症した群をせん妄群,その他を非せん妄群とした.primary endpointには身体活動分類であるNew York Heart Association(NYHA)を使用し,secondary endpointには,3年以内のイベントの発生率,3年以内の全死亡,就労状況とした.統計処理にはMann Whitney U test,Pearson's Chi Square testを用いた.なお,本研究は当院倫理審査委員会の承認を得た上で実施した.
【結果】 アンケートの回収率は62.5%であった.また,せん妄群は非せん妄群と比較して退院後のNYHAが有意に低い結果となった(p=0.01).その他,イベント発生率,3年以内の全死亡,就労状況にて統計学上有意な差は認めないものの,せん妄群はイベント発生率が高く,就労状況が低い傾向にあった.
【結論】本研究では手術後せん妄の発症は退院後の身体活動に影響を与える可能性が示唆されるものとなった.せん妄患者に対する介入は早期リハビリテーションだけでなく,退院後における外来期や維持期の通院型リハビリテーションや訪問リハビリテーションの必要性が示唆された.