[O115-3] 集中治療室で発症したせん妄に対するゾテピンの安全性と効果:単施設パイロット研究
【背景】集中治療室(ICU)で発症したせん妄には抗精神病薬が投与される.クエチアピン(QUE)は高血糖を惹起するため糖尿病患者に対して使用できない.ゾデピン(ZTN)は鎮静作用がQUEと同等で,インスリン分泌抑制作用は少ない.【目的】ICUに入室したせん妄患者にZTNとQUEを比較して有効性と安全性を評価すること.【方法】単施設非盲検無作為化比較試験を実施した.Richmond Agitation-Sedation Scale≧+1でプロポフォールが投与された患者のうち,プロポフォールを漸減中止したが再開あるいは漸増が必要だったIntensive Care Delirium Screening Checklist(ICDSC)≧4の患者を組み入れ,ZTN(Z群)とQUE(Q群)に封筒法を用い,無作為に割り付けた.両群で必要に応じて鎮静剤,フェンタニル,抑肝散,ハロペリドール,オランザピンを追加した.試験薬初回投与翌日のせん妄改善(ICDSC<4)の割合と内服24時間後までの最高血糖値,非せん妄昏睡日数を評価した.本研究はJA広島総合病院 倫理委員会の承認を得て行った.【結果】2015年8月1日から2017年6月30日までに20例が組み入れられ,11例がZ群に割り付けられた.Z群はQ群に比べて年齢が若く,Z群の81.8%(n = 9)が糖尿病だった.せん妄改善率はZ群が54.5%(n = 6)でQ群が66.7%(n = 6)だった(p = 0.67).非せん妄昏睡日数はZ群で中央値12.0 [四分位範囲 12.0, 13.0] 日,Q群で12.0 [2.0, 13.0] 日だった(p = 0.45).内服24時間後までの最高血糖値はZ群で198.0 [170.5 236.5] mg/dL,Q群で183.0 [168.0, 188.0] mg/dLだった(p = 0.57).【結論】ZTNはICUに入室した糖尿病患者の活動型せん妄に対して安全かつ効果的に使用できており,QUEの代替薬となることが示唆された.サンプルサイズが少ないため,今後は症例数を増やしZTNの効果や安全性を検証する必要がある.