第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

チーム医療

[O116] 一般演題・口演116
チーム医療01

Sat. Mar 2, 2019 3:00 PM - 4:00 PM 第20会場 (グランドプリンスホテル京都B2F ゴールドルーム)

座長:植村 桜(地方独立行政法人 大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター 看護部)

[O116-7] 診療科という隔てを越えた母体救命を目指して

持田 勇希1, 守永 広征1, 坂本 学映1, 海田 賢彦1, 樽井 武彦1, 谷垣 伸治2,3, 山口 芳裕1 (1.杏林大学医学部 救急医学, 2.杏林大学医学部 産科婦人科教室, 3.杏林大学医学部付属病院 総合周産期母子医療センター)

妊産婦死亡原因の1位である産科危機的出血は,急速に全身状態の悪化を来しやすく,高次施設に置ける迅速な対応が要求される.そのため,産科医に加えて救急医や集中治療医の介入が重要となる.しかし,複数の診療科を跨ぐことは診療の円滑化を防碍するリスクを伴う.
当施設は東京都多摩地区総合周産期母子医療センター2施設のうちの一つとして,2015年4月から東京都母体救命搬送システムの輪番制に参加することとなった.それを契機に,3次救急に選定搬送される母体救命患者に対しての診療の円滑化と救命率向上を目指し,収容依頼の連絡から各診療科・部門への連絡系統の明確化と,確実かつ迅速に受け入れられる体制を敷くこととした.さらに,産科危機的出血に対して重要となるResuscitative Endovascular Balloon Occlusion of Aorta (REBOA)とUAE(子宮動脈塞栓術)の迅速な介入に取り組んでいる.
第一報を受けた救急医は産科当番医へ連絡し,患者情報を共有し,その後別行動で受け入れ体制の整備を行うこととした.搬送されるまでの間に産科は手術に備えて手術室や麻酔科への連絡・準備を行い,必要に応じて新生児科やNICUなどの部署への連絡を担当する.救急科は初療室のスタッフ配備と資機材の準備,血管造影施行に備えた準備と完全に分業化した.さらに,初期診療のマネージメントに続いてREBOAとUAEの施行についても救急医が担う方策とした.輪番日においては,いかなる状況においても受け入れができるように待機医師の増員などバックアップ体制の強化をした.また,off the job trainingなどを通して治療に対する意識の結束を試みている.
本体制運用後の2015年4月から2018年5月までの期間に計25例の母体救命症例が3次救急搬送された.産科危機的出血症例は11例(44%)で,そのうち4例(36%)にREBOA,6例(54%)にUAEを施行した.搬送からREBOAによる大動脈遮断までの時間は45±20分で,UAE施行症例の血管造影開始までの時間は66±29分であった。救命率は100%であった.
産科危機的出血には迅速な治療介入が必要であるが,各部署の円滑な連携を図ることと,一貫して救急医が濃密に介入することは救命率向上のために重要である.