[O119-4] ハイリスク患者の周術期管理におけるICU管理が患者予後に与える影響
緒言:ICU管理を行う必要がない手術であっても患者リスクのために周術期ICU管理を行う場合がある。しかしながらこういった患者にICU管理が予後に関与しているのか意見の分かれるところである。今回米国麻酔学会身体評価基準(ASA)III、IV度の患者を対象にICU管理が予後に影響しているのか後ろ向きに検討した。また、患者背景調整にはプロペンシティスコアを用いた。方法:本研究は当施設医の倫理委員会の承認を受けた。対象は2007年から2015年までの全身麻酔36880症例とした。院内規定でICU管理が必ず行われる症例、緊急手術症例、20歳未満の症例は除外した。また、ICU管理が対象とならない低侵襲手術も除外した。この中からASAIII、IV度の患者を抽出し、ICU入室症例と非入室症例に分けた。ICUでの管理は看護師患者比1:2で集中治療医が主導して管理し主に動脈ラインによる血行動態監視と血液ガスモニタリングを行った。また管理期間は術後1-2日間行った。患者背景からプロペンシティスコアを算出し患者背景をマッチングさせ90日後の予後不良(死亡または転院)率を比較した。ICU入室患者の予後不良率を5%、非ICU入室患者の予後不良率を15%、αエラー0.05、検出力0.9でサンプルサイズは両群208例必要となった。統計にはMantel-Haenszel Testを用いp<0.05を有意とした。結果:対象となったのは1218例でありICU入室症例は273例で予後不良数は35例であった。一方非ICU入室は945例で予後不良数は134例であった(p=0.62)。マッチング後は両群246例となったが予後不良数はICU群32例と非ICU群37例であった(p=0.60, OR=0.84, 95%CI=0.51-1.41)。また90日死亡に関してはICU群6例と非ICU群5例であった(p=1, OR=1.2, 95%CI=0.37-3.93)。また、30日死亡に関してはICU群5例と非ICU群4例であった(p=1, OR=1.25, 95%CI=0.34-4.65)。考察:今回ハイリスク患者に対しICUの入室の絶対適応にならない手術に対してICU管理が中長期予後に影響を与えるか検討したが、周術期管理に対するICUの影響は小さく有意な結果を見出すことはできなかった。術後の管理に治療介入が少なく監視が目的であったるため中長期的な予後には影響が少なかったと考えられる。結語:ハイリスク患者に対しICUの入室の絶対適応にならない手術に対してICU管理は中長期予後に影響しない。