[O12-5] 虚脱肺と経鼻高流量酸素療法・非侵襲的陽圧換気失敗の関連:胸部CT定量的解析
【背景】経鼻高流量酸素療法(HFNC)と非侵襲的陽圧換気(NIV)は得られる生理学的効果に違いがあり、呼吸不全において虚脱肺から受ける影響が異なる可能性がある。【目的】虚脱肺とHFNC・NIV失敗リスクの関連について、胸部CTの定量的解析により検討する。【方法】4施設で2012年1月~2017年12月に、最初の呼吸療法としてHFNCまたはNIVが施行された急性呼吸不全症例(P/F<300)のうち、開始前後48時間以内に胸部CTが撮影された症例を後方視的に検討した。CTは等間隔に抽出した10スライスにおいて、肺実質を用手的にRegion of interestとして設定し解析した。肺実質はCT値により過膨張肺(-1000~-901HU)・正常肺(-900~-501HU)・低含気肺(-500~-101HU)・虚脱肺(-100~+100HU)と区分し、肺全体に占めるそれぞれの割合として算出した。HFNC・NIV両群において、治療成功例・失敗例の間でCT所見を比較した。治療失敗はHFNCまたはNIV開始後の挿管、改善によらないクロスオーバー、死亡のいずれかと定義した。【結果】解析対象はHFNC群143例、NIV群193例であり、治療失敗はそれぞれ82例(57%)、89例(46%)で見られた。呼吸不全の原因としては、HFNC群では肺炎(34%)、NIV群では心不全(33%)が最多であり、慢性肺疾患増悪・心不全によらないde novo急性呼吸不全はHFNC群で有意に多かった(83% VS 52%, P<0.001)。HFNC群では失敗例は成功例よりも有意に虚脱肺が多かった(29[20-45]% VS 21[16-32]%, P = 0.003)が、NIV群では有意差を認めなかった(22[15-34]% VS 25[17-33]%, P = 0.455)。HFNC群における虚脱肺の治療失敗に対する調整Odds ratioは1.06(95%CI 1.03-1.10, P<0.001)であった。de novo急性呼吸不全に限った検討でも同様の結果が得られた。【結語】虚脱肺の増加はHFNC失敗リスク増加と関連したが、NIV失敗とは関連しなかった。虚脱肺の多い症例でのHFNCは注意を要する。