[O123-4] 胸腔鏡補助下肺癌手術における早期退院要因の検討
【背景】近年、肺癌手術を胸腔鏡補助下で行うことが主流になってきており、開胸術と胸腔鏡補助下手術の在院日数の比較は多く報告されている。一方で、胸腔鏡補助下の肺癌手術の術後在院日数に関連する因子を検討する研究は少ない。【目的】胸腔鏡補助下肺癌手術の早期退院に関連する因子を明らかにする事を本研究の目的とした。仮説として、胸腔鏡補助下肺癌手術の患者において、若年で、術前酸素化能および運動耐容能が高く、Medical Research Council dyspnea scale(以下MRC)、Brinkman Indexの値が低く、喫煙歴が短いと、早期退院に結びつくと考えた。【方法】対象は平成28年4月1日から平成29年3月31日までに当院呼吸器外科で胸腔鏡補助下肺癌手術を行った患者44名とした。評価項目は6分間歩行総距離、術前および術後の室内気でのSpO2、術前および術後MRC、喫煙歴、Brinkman Index、性別、年齢、在院日数とした。各評価項目の関係はSpearmanの相関係数で検討した。在院日数の散布図を作成し、散布図の偏りから3日以内退院、4日以上退院の2群(以下、在院日数2群間)に分けROC曲線を作図した。喫煙歴と在院日数2群間の関係、Brinkman Indexと在院日数2群間の関係は相関比から検討した。解析はSPSS.Ver25を用い5%未満を有意水準とした。【結果】対象患者の年齢は63.3±15.7歳(平均値±SD)、男性25名、女性19名であった。術後平均在院日数は4.0±2.7日(平均値±SD)であった。在院日数との関連を認めた項目は、在院日数2群間と喫煙歴(r=0.470)、術後SpO2(r=-0.311)、および術後MRC(r=0.336)であった。また、喫煙年数と在院日数2群間ではη=0.946の関連を認め、ROC曲線下面積は0.776(95%CI,0.550 to 1.000)であり、喫煙年数のカットオフ値は29.5年と示された。Brinkman Indexと在院日数2群間ではη=0.585の関連を認めたものの、ROC曲線から有意な予測は得られなかった。術前SpO2、術前MRC、性別、年齢では相関が得られなかった。【結論】胸腔鏡補助下肺癌手術における早期退院の関連因子として、喫煙歴、Brinkman Index、術後SpO2、術後MRCが示された。これらの要因を周術期に評価することで、より綿密に入院および治療計画を立てることができると考えられる。