[O124-6] ICUにおける抜管後嚥下障害に対する対策-当院独自の嚥下評価プロトコルの有用性-
【背景】当院ICUでは抜管後の嚥下評価を独自にプロトコル化して運用し、嚥下障害が疑われる症例に対しては早期に言語聴覚士(以下、ST)が介入することで合併症の予防に努めている。今回、嚥下機能評価プロトコル(以下、プロトコル)にて嚥下機能評価を行った症例を基に、作成したプロトコルの有用性・安全性などを検討した。【当院のプロトコル】治療のために経口摂取が開始できない症例を除き、ほぼ全例に抜管後6時間経過後から看護師が次の手順で評価している。1,嚥下評価施行の可否(全身状態)の評価(意識・循環・呼吸など)、2,嚥下障害ハイリスク項目の評価(脳血管疾患の既往や発症・48時間以上の挿管・頭頚部の治療歴・嚥下障害の既往・ICU-acquired weaknessなど)、3,スクリーニングテスト(反復唾液のみテスト(以下、RSST)、改定水飲みテスト(以下、MWST))。ハイリスク項目に該当した例とスクリーニングテスト不通過例に対してはSTが介入する。【対象】2015 年8月~2018年6月に当院ICUにて人工呼吸管理をし、抜管した患者250例。平均年齢70.7歳、男性151例。【方法】ST介入群と非介入群について比較検討した。また、ST介入群の初回と退院時の嚥下機能を藤島Grで評価し、当院退院時に嚥下障害が消失した例(藤島Gr9-10)と残存した例(藤島Gr1-8)を比較検討した。【結果】ST介入例は75例(30%)であった。ST介入群で人工呼吸日数・ICU滞在日数が有意に長く、SOFA、APACHE2Scoreが有意に高かった。またNPPV装着例やICU緊急入室例、せん妄を認めた例が有意に多かった。有意差を認めた項目の多変量解析ではICU緊急入室例オッズ比2.87(p=0.012)のみ有意差を認めた。ST介入群の初回藤島Grの中央値5、終了時藤島Grの中央値10であり嚥下機能は有意に改善していた。当院退院時に嚥下障害が残存していたのは15例(20%)であった。退院時に嚥下障害が残存していた例では脳血管疾患の既往例が有意に多く、BMIが有意に低かった。また、ST介入例の中で誤嚥性肺炎発症例は認めなかった。【結論】プロトコルを使用することで安全にかつ正確に嚥下機能の評価を行うことができた。挿管症例の中でも緊急入室例や重症例など長期人工呼吸器管理が必要となると嚥下障害を発症しやすいが、適切な評価とSTによる機能訓練や症例の嚥下障害に対応した食事調整を行うことで誤嚥性肺炎を予防し、より早期に嚥下障害を改善させることができるのではないか。