[O126-4] 退院時ADL自立に影響を及ぼす集中治療室における身体・精神機能の検討
【背景】ICUから開始される早期リハビリテーションの目的は重症患者に対して身体機能や認知機能の低下を最小限に食い止め,日常生活動作(ADL)自立を支援し,社会復帰を実現することである.しかし,具体的にICU入室中のどのような身体・精神機能が退院時のADL自立のために重要であるかについては明らかではない.このように退院時のADL自立に影響するICU入室中の要因が明らかになれば,早期リハビリテーションを効率的に行うための一助となる可能性がある.【目的】本研究はICUにおけるせん妄の有無,立位や歩行といった基本動作能力が退院時のADL自立に影響を与えることを仮説とし,退院時のADL自立に寄与するICUにおける身体・精神機能の要因を解析することで仮説の検証を行うことが目的である.【方法】本研究はcross sectional studyである.対象は2014年7月から2018年7月に当院救急集中治療センター(ICU6床,semi-closed)でリハビリテーションを実施した377症例から死亡例,心筋梗塞・脳卒中・神経筋疾患・心臓血管外科手術・緩和期の症例,ICU滞在日数が2日未満を除外した者とした.ICUでのリハビリテーションはプロトコルによる標準的な介入を行った.主要アウトカムは退院時ADLの自立(Functional independence measure(FIM)108点以上)として,ICU入室中の情報として年齢,性別,基礎疾患,APACHEII,人工呼吸器使用日数,せん妄(ICDSC4点以上)日数,ICU在室日数,在院日数,初回立位までの日数,ICUでのリハビリ時間,ICU退室時のMRC scoreとFunctional Status Score for ICU (FSS-ICU)を調査した.統計学的解析は退院時ADL自立の有無を目的変数,ICU入室中の情報を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った. 本研究は当院倫理審査委員会の承認(第30-113号)を得た.【結果】解析対象は92例,年齢74.0±12.0歳,男性49名・女性43名,APACHEII19.4±8.2点,退院時ADL自立症例45名であった.退院時ADL自立に影響する因子として年齢(odd比:0.85, 95%CI:0.79-0.92),せん妄日数(odd比:0.46, 95%CI:0.29-0.74),ICU退室時FSS-ICU(odd比:1.11, 95%CI:1.01-1.22)が抽出された. 【結論】ICU患者の退院時ADLの自立には年齢,せん妄日数, FSS-ICUで評価されたICU退室時の基本動作能力が影響していた.