第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄

[O127] 一般演題・口演127
鎮痛・鎮静・せん妄03

2019年3月2日(土) 08:45 〜 09:45 第22会場 (グランドプリンスホテル京都1F ロイヤルルーム)

座長:吉里 孝子(熊本大学医学部附属病院)

[O127-7] A病院救命救急センターにおけるPADケアバンドル導入後の人工呼吸器装着患者のせん妄ケアの実態調査

本間 千尋1, 金浜 英介1, 葛西 陽子2, 奈良 理1 (1.手稲渓仁会病院 救命救急センター, 2.手稲渓仁会病院 看護部)

(目的)A病院救命救急センターでは、2015年よりJ-PADガイドラインで推奨されているPADケアバンドルを導入している。本研究の目的は、PADケアバンドル導入によるせん妄発症の予防効果について検討することである。(方法)2018年5月1日から7月31日までの期間、A病院救命救急センターに入院した人工呼吸器装着患者をPADケアバンドル導入群とした。また、PADケアバンドル導入以前である2014年7月1日から12月31日までの期間における人工呼吸器装着患者を対照群として2群間のせん妄発症率に対して比較検討を行った。昏睡状態などの理由によりせん妄評価不能である患者は除外した。対照患者の年齢、性別、原疾患、脳疾患の割合、鎮静・鎮痛評価を調査した。せん妄の判定は、ICDSCを使用し、救命センター在室中に一度でも4点以上に達した患者をせん妄と判定した。鎮静・鎮痛評価はRASS、BPSを使用し、各症例の救命センター入室期間中のRASS、BPSのスコアの最頻値を抽出した。RASSおよびBPSの最頻値がバンドルの目標(RASS:0~-2, BPS≦5)に達しているかどうかでせん妄発症率に影響するかどうかも検討を行った。統計学的検討にはFisher正確検定を行った。(結果)PADケアバンドル導入群は17名、対照群は36名であった。 導入群における患者の背景因子は年齢63.2±14.7歳、男性82.4%、脳疾患の割合35.0%であり、これらは対照群の年齢65.9±19.6歳、男性55.6%、脳疾患の割合41.6%と比較して有意差はなかった。PADケアバンドル導入群におけるせん妄発症率は64.7%であり、対照群61.1%と比較して有意な差はなかった。RASSの目標値は17名中12名で達成できていたが、せん妄発症率は33.3%であり、非達成群5名のせん妄発症率40.0%と比較して有意な差はなかった。BPSにおいては全例が目標を達成していたため、せん妄発症率の比較調査はできなかった。(考察)RASS、BPSについてはPADケアバンドルの目標を達成できていた症例が大部分であったが、調査の結果、PADケアバンドルの導入前後では人工呼吸器装着患者におけるせん妄発症率に差がないことが分かった。 少数の検討ではあるため、より大規模な試験での確認が必要と考えられるが、せん妄発症予防はPADケアバンドルの遵守のみでは達成できない可能性が示唆された。