[O128-4] せん妄発症が臨床指標に与える影響–単施設での検討–
【背景】ICUでのせん妄の発症率は20~30%であり、一旦発症すると認知機能の低下や死亡の独立因子になるという報告がある。さらにせん妄の発症は離床の阻害因子となることや人工呼吸器の装着時間、ICU入室期間が延長することが知られている。ICUを退室した後にも影響があり、入院期間の延長やQOLの低下、認知機能の低下が起こる可能性がある。そこでA病院集中治療室に入室しせん妄を発症した患者を対象に臨床指標に与える影響を後視的に調査した。【目的】せん妄発症患者は非せん妄発症者と比較しICU入室期間、入院期間が長く、離床が遅い可能性がある。またICUを退室し一般病棟を経てからの転帰(自宅退院、転院、死亡)にも影響する可能性がある。【方法】症例対照研究である。2017年4月から2018年3月までにICUに24時間以上入室した18歳以上の成人患者を対象とし、昏睡の患者は除外した。CAM-ICUによりせん妄の有無を判定し、せん妄群と非せん妄群の2群間に分け比較検討を行う。検討項目は、ICU入室期間、入院期間、ICU入室から30日時点での死亡と生存、患者の転帰(自宅退院、転院)、集中治療室の再入室、再入院の有無、人工呼吸器装着時間、端坐位となるまでの日数について調査する。【結果】せん妄群36名、非せん妄群208名であった。年齢の平均値は(76±8 vs 68±13,p=0.001)、APACHE2の中央値(16 vs 10,p<0.001)であった。せん妄はICUに入室し3日(中央値)で発症していた。ICU入室期間の平均値は(6±4 vs 6±26,p=0.92)、入院期間の平均値は(53±39 vs 31±31,p<0.001)、入室から30日後時点でのせん妄の有無による死亡、生存に有意差は認められなかった。自宅退院、転院の有無を調査するとせん妄発症患者は転院する割合が高かった(p<0.001)。入院中にICUに再入室する患者は4名、退院後に再入院する患者は4名であった。また人工呼吸器装着時間の中央値は(65 vs 14,p<0.001)であり、端座位となるまでの日数の中央値は(5 vs 2,p<0.001)であった。【結論】せん妄発症により入院期間、患者の転帰、人工呼吸器装着時間、端座位となるまでの日数に影響することが判明した。