第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

鎮痛・鎮静・せん妄 研究

[O128] 一般演題・口演128
鎮痛・鎮静・せん妄 研究03

Sat. Mar 2, 2019 9:45 AM - 10:35 AM 第22会場 (グランドプリンスホテル京都1F ロイヤルルーム)

座長:山室 俊雄(奈良県立医科大学附属病院救命救急センターICU)

[O128-5] 集中治療域における記憶の有無と精神症状の調査

中本 啓太, 穴井 聖二, 竹本 亜耶, 濱田 明奈, 楠本 真弓, 岸 ゆつき, 岡 夏希, 内芝 秀樹, 中島 強, 宮本 恭兵 (和歌山県立医科大学附属病院 看護部 ICU)

【背景】現在集中治療領域で、PICSという概念が注目されている。ICU入室中の記憶が欠落し、実際の出来事と現在の状態との関連に悩みながら日常生活を送る、いわゆる「記憶がゆがむ」患者が存在する。患者はICU退室後も不安や抑うつ症状が継続しやすいという特徴があり、それに伴う精神症状から社会的自立の阻害に至ることがある。重症例では外傷性ストレス障害post traumatic stress disorder(PTSD)にまで発展する場合もあると報告されている。しかし集中治療を受けている患者の記憶の有無がその後の精神症状にどのような影響を与えているかの調査は少ない。【目的】ICU入室中の記憶の有無が、不安・抑うつ・PTSD症状に影響を与えるか関連を明らかにすることを目的とした。【方法】2016年9月1日から2018年3月31日までにICUに緊急入院し退室した成人患者を対象とし、退室3ヶ月後にアンケートを送付した。参加に不同意、ICU退室後3ヶ月以内に死亡した患者は除外した。ICU入室中の記憶の有無を選択式、PTSDの評価にImpact of Event Scale-Revised(IES-R)、不安、抑うつの評価にHospital anxiety and depression scale(HADS)を使用した。その中で鮮明な記憶・曖昧な記憶があると回答した者を記憶あり群とし調査を行った。【結果】アンケートを125人に送付し、回収は99人(回収率79%)であった。記憶に関して無回答の9人は除外した。回答者90人の年齢は68.3±14.7歳、性別は男性50人(56%)、疾患分類は敗血症32人(36%)、外傷11人(12%)、その他47人(57%)、であった。その中で記憶あり群の患者は64人(71%)であった。IES-R回答者数は記憶あり群57人、記憶なし群15人、無回答18人で、このうちPTSD症状を示した者は記憶あり群で10人(18%)、 記憶なし群で3人(20%)であった。HADS回答者数は記憶あり群58人、記憶なし群19人、無回答13人であり、不安症状を示した者は記憶あり群で20人(34%) 、記憶なし群で10人(52%)であった。また抑うつ症状を示した者は記憶あり群で25人(43%) 、記憶なし群で12人(63%)であり、いずれも記憶なし群で高い傾向にあった。【結論】記憶なし群では、記憶あり群に比べPTSD・不安・抑うつ症状を多く認める傾向にあった。しかし記憶がある患者も、記憶がない患者も同程度でPTSD・不安・抑うつの症状が認められた。記憶の有無が精神症状にどのような影響を与えるかは今後の研究課題である。