[O129-1] 端座位姿勢が瞳孔径や対光反射に与える影響
【背景】近年、重症患者に対して早期離床を行うことによる、筋力低下やせん妄を抑制できる効果が明らかになっている。しかしながら、早期離床による即時的な効果に関する研究報告は少ない。一方、実際に重症患者に対して早期離床を行っていると、端座位施行後、即時的に患者の意識レベルが向上することをしばしば経験する。【目的】重症患者において、端坐位施行が意識レベルや、瞳孔径、対光反射へ与える影響を調査することを目的とした。【方法】2018年7月から8月までの期間に当院ICUに入院し、リハビリテーション治療を受けている人工呼吸管理中の重症患者を対象とした。対象患者について、自動瞳孔記録計NPi-200を使用して、仰臥位時と端坐位時において、縮瞳前の瞳孔径、縮瞳後の瞳孔径、縮瞳率、平均縮瞳速度、最大収縮速度を測定した。その際、意識レベルの評価としてGlasgow Coma Scale (GCS)も同時に評価した。【結果】対象は11名で、男性8名、女性3名であった。平均年齢は64.3±15.2歳であった。主病名について、肺炎が4名で脳卒中が3名、開腹術後が2名、腹部大動脈瘤破裂が1名、甲状腺出血が1名であった。仰臥位時ではGCSは縮瞳後の瞳孔径、縮瞳率、平均縮瞳速度、最大収縮速度と有意な相関を認め、相関係数はそれぞれ、-0.633、0.851、0.679、0.679であった。また、端坐位時ではGCSは縮瞳率、最大収縮速度と有意な相関を認め、相関係数は0.845、0.628であった。端坐位時では仰臥位時に比して、縮瞳前の瞳孔径、縮瞳後の瞳孔径、縮瞳率、平均縮瞳速度、最大収縮速度が有意に大きかった(すべて左右の平均値)。また、端坐位時では仰臥位時に比して、GCSが有意に大きかった。【結論】本研究の結果、重症患者に端座位を施行することによって、意識レベルを向上させる可能性が示唆された。また、自動瞳孔記録計によって測定した項目のうち、縮瞳率はGCSによって評価される意識レベルと比較的強い相関を認め、早期離床を行う際の生理学的指標として有用かもしれない。