[O129-7] VA-ECMO患者に対する骨格筋電気刺激の経験
【背景】体外式膜型人工肺(以下ECMO)患者は、侵襲後の異化亢進に加え安全に対する配慮から四肢体幹における運動は著しく制限され、早期から筋力低下が生じることが知られている。一方、骨格筋電気刺激(以下EMS)によって運動困難な重症心不全や重症COPDの筋力増強及び運動耐容能の改善や、多臓器不全患者の骨格筋喪失を抑制するとの報告があり、ECMO患者にも有用性が期待される。これまでの報告の多くは電極パッドが数cm四方のEMSを用いており、ベルト型電極の骨格筋電気刺激(以下B-SES)によるECMO装着患者に対する広範囲の筋への刺激の効果や安全性について検討した報告は見当たらない。【症例】48歳男性。就業中に突然発症した急性心筋梗塞と心肺停止蘇生後。当院搬送後にECPRとしてVA-ECMOを導入されPCIを施行された。その後IABP及び脳低温療法が開始された。当初IABP停止によって血圧は80台から60台へと低下し、左室駆出率では5%未満であった。その後機械的サポート下に心機能の回復傾向を認め、4日目にはカテコラミンを減量し始め、同日理学療法も開始となった。7日目にECMOを離脱し、10日目にIABP抜去後からはヘッドアップや筋力増強運動を開始できていたが、心不全が再増悪し14日目にIABPを15日目にVA-ECMOを再導入となった。理学療法はこの後他動運動へと運動負荷を落としたが、管理の長期化に伴う廃用性筋萎縮の懸念が強まり、27日目にB-SESを導入した。36日目に体外式左室補助心臓導入とともにVA-ECMOを離脱し、49日目にICU退室となった。理学療法ではB-SESを不定期ながらも人工呼吸を離脱した45日目までに、合計10セッション(内6セッションがECMO下)実施し、47日目から端坐位、63日目に車いす乗車、82日目に立位練習を開始した。【結果】B-SES実施前後でバイタルサインやECMO血流量は明らかな変動無く経過し、B-SES実施中のECMO刺入部の出血やカニューレの異常なども生じなかった。エコーによる大腿部の筋厚はB-SESの開始時には15.8mm、一週間後には14.8mm と6.3%の低下にとどまった。【結論】 ECMO装着患者に対するリハビリテーションではカテーテル刺入部の位置異常及び出血、lung rest、などに配慮した報告が多くみられる。またECMO装着後の20日間で大腿四頭筋筋厚が30% 低下したとの報告も見られる。今回、本症例で適用したB-SESでは循環を阻害することなく筋委縮が抑制されており,今後症例を重ねて有効性の検討が望まれる。