[O132-3] OHDFとCHDF時のクリアランス差を応用したVCM投与量調節法
【はじめに】当施設では、敗血症ショック急性期にオンライン高流量高容量持続血液ろ過透析(OHDF)を行っている。ショックを離脱した後に血液浄化が必要な場合は,持続血液ろ過透析(CHDF)に変更する。これらの血液浄化実施中,抗菌薬は除去されるため,投与量の調節を要する。バンコマイシン(VCM)は血中濃度から投与量調節が必要であるが,血液浄化の条件変更でVCMクリアランス(VCMCL)が変化するため,投与量の再調整が必要になる。あらかじめ,OHDF,CHDF時のVCMCLがわかれば,OHDFからCHDFへの変更時に,速やかにVCM投与量を変更できる。集中治療を要する患者では早期の適正量投与が望まれ,投与量調節までの期間を短縮する必要がある。本研究ではOHDFとCHDFのVCMCLの差を投与量調節に活用する方法を検討した。【目的】OHDFとCHDF時のVCMCLを調査し,OHDF中に実施した血中濃度測定の結果から,CHDF時の適正投与量を推定する。【方法】本研究は,名古屋市立病院臨床研究審査委員会の承認を得た。対象は,OHDF施行,VCM投与が必要と判断され,本人または代諾者から同意が得られた患者とした。透析膜はPMMA膜を用い,OHDF,CHDFの条件は,それぞれ血液流量150mL/min,100mL/min,透析液流量300mL/min,300mL/h,補液流量2L/h,600mL/hとした。VCMの投与量は,OHDF時は1回 20mg/kg,12時間毎,CHDF時は1回10mg/kg,24時間毎とした。VCMCLを算出するため,OHDF時は5回目VCM投与終了後1時間,3時間,5時間,6回目投与直前の4回,CHDF時は,CHDF変更後3回目VCM投与終了後1時間,3時間,5時間,4回目投与直前の4回,計8回VCM血中濃度測定を行った。採血は,血液浄化脱血側で行った。VCM血中濃度解析ソフト「OptjpWinS TM」で VCMCLを算出した。【結果】5名の患者(男/女:4/1)でOHDF時とCHDF時のVCM血中濃度を測定した。VCMCLはOHDF時で5.7±0.7L/h,CHDF時で1.5±0.5L/hであった。【結論】CHDF時はOHDF時に比べVCMCLが約1/4に低下した。CHDF時のVCM適正投与量はOHDF時の約1/4と考えられ,血中濃度の再測定を待たずに,CHDFに変更時から適正量のVCM投与が可能になると思われる。