[O134-5] 持続的血液浄化療法におけるリコンビナントトロンボモジュリン製剤の治療効果について
【背景】救急・集中治療領域には重症な病態や疾患に播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発した患者が多く、治療に難渋する症例を多く経験する。DIC併発症例における持続的血液浄化療法(CBP)は、凝固活性により回路内凝固をきたし易いこと、体外循環の抗凝固薬による出血リスクの増加により治療に難渋することが少なくない。DIC治療については、アンチトロンビン(AT)製剤やリコンビナントトロンボモジュリン(rTM)製剤などの生理的抗凝固物質の使用が注目されており、抗凝固作用に加えて、抗炎症作用についても報告されている。しかし、血液浄化療法における抗凝固薬との併用時における効果や安全性に関しては不明確な点も多い。【目的】DIC併発のCBP症例に対するrTMが治療効果に与える影響について検証する症例集積研究である。【方法】対象は、当院ICUで2016年1月から2018年8月までに抗凝固薬にナファモスタットメシル酸塩(NM)を用いてCBPを施行し、CBP施行中にrTMを投与した成人47例(男性29例、女性18例、年齢 65.0 ± 13.6 歳)。検討項目は、rTM投与前後の膜寿命とNM流量、ACT、APTT、AT3、FDP、D-dimer、急性期DICスコアとした。【結果】rTM投与量は337.4 ± 94.0 U/Kgであった。膜寿命は投与前 19.9 ± 16.8 hr(膜素材はAN69ST 63.8 %、PMMA 6.4 %、CTA 29.8 %)、投与後 43.2 ± 20.9 hr(膜素材はAN69ST 51.1 %、PMMA 17.0 %、CTA 29.8 %、PS 2.1 %)であり、投与後で有意に延長した。NM流量は投与前0.46 ± 0.16 mg/Kg/hr、投与後0.38 ± 0.21 mg/kg/hr、ACTは投与前207.4 ± 31.8 sec、投与後 205.0 ± 42.0 sec、APTTは投与前84.0 ± 65.6 sec、投与後 71.0 ± 27.7 secであり有意差は認めなかった。AT3は投与前55.2 ± 16.3 %、投与後 75.5 ± 26.4 %であり、80.9 %でAT製剤を併用した。FDPは投与前40.8 ± 49.9 μg/mL、投与後 26.0 ± 27.5 μg/mL、D-dimerは投与前 16.1 ± 13.4 μg/mL、投与後 13.0 ± 10.1 μg/mL、急性期DICスコアは投与前5.2 ± 1.2、投与後 4.8 ± 1.8であり投与後で有意に低下した。【結論】DIC併発のCBP症例に対するrTM投与は、出血リスクを増強させずに、DICスコアを改善させ、膜寿命を延長させたことから安全にCBPの施行が可能で、病態改善にも寄与することが示唆された。