第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

多臓器関連

[O135] 一般演題・口演135
多臓器関連

Sun. Mar 3, 2019 8:45 AM - 9:45 AM 第10会場 (国立京都国際会館1F Room C-1)

座長:新井 正康(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター・集中治療医学)

[O135-7] 絞扼性腸閉塞によるARDSに対しECMO導入下にダメージコントロール戦略で救命した一例

岩永 幸子, 永嶋 太, 品田 公太, 中山 賢人, 櫻井 良太, 太田 美穂, 鳴海 翔悟, 岩村 高志, 阪本 雄一郎, 井上 聡 (佐賀大学医学部附属病院 高度救命救急センター)

【背景】重篤な成人呼吸窮迫症候群(ARDS)をきたすような症例においては、手術が必要な状態であっても、術中、術後管理は困難を極め、しばしば手術さえも施行できずに救命できないことも少なくない。今回、我々は人工呼吸器管理にもかかわらず低酸素状態が持続した絞扼性腸閉塞を伴うショック患者に対しVV-ECMOを導入後、ダメージコントロール戦略により救命できた症例を経験したので報告する。【臨床経過】71歳男性。某日朝、意識障害のため当院へ搬送された。来院時、意識レベルはE3V4M5で不穏状態、心拍数108回/分、血圧76/46mmHgとショック状態で、呼吸数25回/分、補助換気下でSpO2 82%と高度の呼吸不全を認めた。胸部Xpにて両肺ほぼ全葉に浸潤影を認めた。腹部膨隆も認めたためエコーを施行したところイレウスが疑われ、CTで絞扼性腸閉塞の診断となり、緊急手術が必要な状態であった。qSOFAは3項目該当あり、誤嚥性肺炎による敗血症性ショックと診断し、大量輸液および昇圧剤投与、気管挿管の上、人工呼吸器管理を開始した。集中治療室での集学的管理を開始したが、呼吸状態は改善認めずP/F ratioは100以下が持続する重篤な状態であった。この状態では手術は不可能であると判断し呼吸状態を改善させる目的でまずVV-ECMOを導入した。導入後は著明に酸素化改善あり、それに伴って血圧も上昇傾向で昇圧剤は漸減できたため、VV-ECMO下に緊急開腹手術を行った。開腹所見としては大量の腹水貯留と、数か所のバンド形成を認めたためこれらを切離しイレウス解除を施行した。腸管の色調は徐々に改善を認めたが、VV-ECMO下の状態で凝固障害、代謝性アシドーシスを認め、腸管浮腫も広範に認めたため、一期的閉腹による腹部コンパートメント症候群が懸念されたため、ダメージコントロール手術としvacuum packing closureによるopen abdominal management(OAM)を選択した。第3病日にplanned re-operationを行い、腸管虚血は認めず閉腹とした。全身状態は徐々に安定し、第5病日にECMO離脱、人工呼吸器管理が長期に及ぶと判断し、第12病日に気管切開術を施行した。第20病日に呼吸器を離脱し、第48病日に転院した。【結論】重篤な呼吸循環不全を伴う緊急手術症例に対して、VV-ECMO導入下のダメージコントロール手術は非常に有効であると考えられた。