[O136-1] ショックを呈した熱中症の一例
【背景】重症熱中症では高度の血管内脱水から循環血漿量減少性ショックを来たす。体温の上昇を伴う場合には、末梢血管の拡張を伴うことでショックを増悪させうる。血流を維持するために通常は頻拍になることが多いが、今回、頻拍を伴わないショックを呈した熱中症症例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は68歳男性、2型糖尿病で当院代謝内科に通院中。8月某日の日中、炎天下で農作業中にふらついて体動困難となり、近医を受診。ショック状態であったことから当院に転送となった。来院時は意識は清明で体温36.6度、BP70/43mmHg、HR81回/分、SpO2は94%だった。末梢冷感は目立たないものの、橈骨動脈の拍動を触知できなかったためショックと判断した。普段の腎機能は正常であったが、血液検査でCr 3.2mg/dLと腎機能障害を認め、Hb 18.0g/dLと血液濃縮所見を認めた。動脈血液ガス分析では軽度の代謝性アシドーシスを認めたが、乳酸は正常範囲であった。心エコーでは心機能に異常はなく、下大静脈は虚脱していた。頻拍ではなかったが、状況から熱中症に伴う循環血漿量減少性ショックと腎前性の腎障害を疑い、細胞外液を2000mL負荷するも血圧は上昇せず、ノルアドレナリンの持続静注を開始した。その後、近医からオルメサルタンメドキソミルが処方されていたことが分かり、頻脈を伴わないショックの原因として、脱水による同薬の降圧作用の増強が考えられた。救命病棟に入院とし、細胞外液の投与を継続したところ、入院翌日にはノルアドレナリンの持続静注も終了でき、入院6日目には腎機能も正常化し、自宅退院となった。【結論】熱中症の場合には高度の血管内脱水を伴っていることが多く、降圧剤を服用している場合には血中濃度の上昇からショック状態を来すことがある。細胞外液の負荷だけでは血圧が維持できないこともあるので、注意が必要である。