[O137-1] 屋内発症による偶発性低体温症の予後について
【背景】 偶発性低体温症(AH)は体温が35℃以下と定義されており、死亡率の高い公衆衛生上の重要な問題である。AHの発生は地理的な要因や季節に影響され、多くの研究は寒冷地での報告である。しかし高齢者では著明な寒冷暴露がなくてもAHの発症は考えなくてはならず、近年の都市部では屋内発症のAHの発症例が示唆されている。しかしながら、これらの発生場所ごとの特徴や予後について多施設で通年の複数年間を検討した研究はなく、未だ実態調査は不十分である。【目的】 我々は他施設後方視的観察研究であるthe Japanese accidental hypothermia network registry (J-Point registry)を行った。この研究を用いて我々は屋内発症と屋外発症の事案でICUに入室した症例について、患者背景、来院時現症の違い、発症場所の詳細、死亡率、入院期間、ADL低下の有無について調査を行うこととした。【方法】この研究はJ-Point registryによる他施設後方視的研究である。18歳以上で発症した場所が分かっているAHの患者が選択された。主要評価項目は院内死亡率とした。副次評価項目としてICU滞在日数、ADLの低下を選択した。【結果】J-Point Registryに登録された572症例から35度以下のICUに入室した18歳以上の患者を選択し、計260例の症例が選択された。屋外発症は52症例で、屋内発症は208症例であった。院内死亡率は屋内発症群の方が屋外発症群よりも高い傾向にあった (27.4% 対 17.3% , p=0.156)。ICU滞在日数は屋内発症群と屋外発症群で3日(2-6) 対 2日(1-4)と屋内発症群で長かった(p=0.02)。退院時にADLが低下した割合も屋内発症群で高い傾向にあった(34.9%対44.2%,p=0.297)。【結語】今回我々の研究では、屋内発症の低体温症の群で死亡率が高い傾向にあった。今後は屋内発症の偶発性低体温症について警鐘を鳴らし、予防や早期の発見の対策を行っていく必要がある。