第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

家族支援

[O138] 一般演題・口演138
家族支援

2019年3月3日(日) 08:45 〜 09:45 第11会場 (国立京都国際会館1F Room C-2)

座長:比田井 理恵(千葉県救急医療センター)

[O138-7] 患者家族がICUリハビリテーションに参加した1例

河内 由菜1, 平間 陽子1, 山田 香織1, 立石 順久2, 大島 拓2, 古川 誠一郎3, 今井 正太郎3, 竹内 純子1, 織田 成人2 (1.千葉大学医学部附属病院看護部, 2.千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学, 3.千葉大学医学部附属病院リハビリテーション部)

【背景】近年,ICU入室患者が退室後に認知精神障害を発症するPICS(postintensive care syndrome)が問題となっており,同様に家族に精神症状が発症するPICS-F(postintensive care syndrome-family)の存在も明らかとなっている.PICS-Fを予防・軽減するためには,コミュニケーションや意思決定の共有などの方法がある.今回PICS-Fの予防目的として家族がICUでのリハビリテーションに参加することを計画・実践したため報告する.
【症例】対象は腹部外科術後,敗血症性多臓器不全の75歳男性の妻.患者は当院転院時より軽度の意識障害が遷延し,呼吸不全に対する人工呼吸管理と腎不全に対する持続的腎補助療法を行なっていた.
【方法】リハビリテーション部が介入し,二次障害予防のためのリハビリテーションを施行していた.第28病日に妻のリハビリテーションへの参画意識や患者に対する思い,そして妻のニーズを聴取した.同意が得られたため,第29病日より家族によるリハビリテーション(以下家族リハ)を開始した.四肢関節の可動域運動方法を提示しポスターを作成し,実施方法を理学療法士が指導した.家族リハを行う際には看護師に声をかけていただき,安全に行えるよう配慮した. 第31病日と第39病日に重症・救急患者家族アセスメントのためのニード&コーピングスケール(CNS-FACE2)を算定した.このスケールではニード(欲求)6分野とコーピング(対処)2分野を点数化し,高い点数ほどニードやコーピングが高まっていることを示している.
【結果】第31病日は情緒的サポート,情報,接近,保証の各ニードが高く第39病日もニードも概ね同様だった.一方で,第31病日には情動的コーピングが54点,問題志向的コーピングが29点だったのに対し,第39病日には情動的コーピングが62点,問題志向的コーピングが33点と上昇した.妻は面会時に自らリハ参加の希望を申し出ることが多く,リハ実施中の妻の表情は穏やかであり,面会中の医療者との会話も増えた.家族リハを通して妻の情動的,問題志向的コーピングは向上した.またニードが高いという結果を知ることができたため,積極的に家族リハへ参加を促すことができた.
【結論】今回のリハ介入により妻自身の満足の他,医療者とのコミュニケーションを増やすことができた.今後は看護師が主体的にCNS-FACE2を活用し,家族アセスメントに基づいてPICS-Fの予防につなげる関わり方を検討していく.