第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

ショック

[O14] 一般演題・口演14
ショック02

2019年3月1日(金) 17:15 〜 17:55 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:増野 智彦(日本医科大学付属病院高度救命救急センター)

[O14-2] MPOANCA関連血管炎による肺胞出血治療中に多発性腎出血・NOMIを合併した一例

佐藤 貴志 (伊勢赤十字病院)

■症例 68歳男性■既往歴 末期腎不全(原疾患 慢性腎炎、X-12年に血液維持透析導入)、狭心症(抗血小板薬内服中)、高血圧■現病歴 X-7病日に血痰症状出現。自己判断にて経過観察としていたが、X病日に当科外来透析受診時に血痰持続の訴えあり。同日胸部CT施行し、びまん性肺胞出血を認め、当科入院となった。血管炎に伴う肺胞出血と想定し、X+1病日よりPSL40mg内服開始。X+7日にMPOANCA陽性と判明し、MPOANCA関連血管炎に伴う肺胞出血としてPSL内服継続とした。X+6病日以降血痰症状は消失。X+13病日に胸部CT施行し、肺病変の消失を確認した。X+14病日夜より左側背部痛あり、CT検査施行。左腎周囲に出血性変化を認め、泌尿器科・放射線科コンサルトし、緊急腎動脈塞栓術施行となった。造影検査にて左下極と上極から出血がみられ、塞栓術施行した。塞栓術8時間後のCT検査では左腎出血の増悪なく、血圧も安定していたため、血液透析を3時間施行した。透析終了後再度腹痛症状増悪あり、程なくして心肺停止となった。挿管管理・アドレナリン投与開始し、CPR5サイクル目に自己心拍再開した。透析に伴う再度の腎出血を想定し、CT検査施行したが出血性病変の増悪はみられなかった。輸血等の全身管理を施行したが、再度心肺停止となり、永眠された。病理解剖施行した。肺組織では血管炎病変を認め、左腎周囲に中等量の出血を右腎周囲にも少量の出血を認めた。また悪臭を伴う少量の腹水を認め、一部虚血性変化を認めた。透析終了時点で乳酸の高度貯留を伴う代謝性アシドーシを認め、自己心拍再開後採血ではCK・AST/ALT・LDH高値を認め、細胞の壊死性変化を示唆した。直接死因として血液透析により誘発されたNOMIの可能性が推測された。■考察 MPOANCA関連血管炎による肺胞出血治療中に多発腎出血・NOMIを合併した一例を経験した。本症例の腎出血の原因として腎嚢胞・薬剤(抗血小板薬)・コントロール不良の高血圧が誘因子として挙げられる。また血管造影では左腎から複数個所の出血みられ、解剖では反対側の腎出血が指摘された。血管炎による腎動脈出血の可能性は否定できず、肺胞出血の合併もあり極めて稀な症例であった。また腎出血増悪なく、バイタル安定を確認後に血液維持透析を施行したが、NOMIを惹起した可能性が高く、全身管理が非常に困難な症例であった。救命に必要であった判断の分岐点について文献的検討を交えて考察する。