第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

ショック

[O14] 一般演題・口演14
ショック02

Fri. Mar 1, 2019 5:15 PM - 5:55 PM 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:増野 智彦(日本医科大学付属病院高度救命救急センター)

[O14-3] 肺高血圧症に伴う高度の右心不全で発症した敗血症性ショックの1症例

山本 祐未, 南 絵里子, 山岡 正和, 林 文昭, 山下 千明, 倉迫 敏明 (姫路赤十字病院 麻酔科)

【背景】発症早期の敗血症の診断はときに困難で、治療介入の遅延をもたらす場合がある。今回、肺高血圧症に伴う高度の右心不全で発症し、早期診断が困難であった敗血症性ショックの1症例を報告する。
【臨床経過】71歳、女性、身長140.4 cm、体重47.0 kg。間質性肺炎、気管支喘息で在宅酸素療法を導入されていた。入院4ヶ月前の心エコーで三尖弁逆流圧較差40 mmHgと上昇していた。入院当日、予定受診の外来待合で突然嘔吐し、その後深昏睡、あえぎ呼吸、橈骨動脈触知困難となりICUへ搬入された。入室時は収縮期動脈血圧30 mmHg、心拍数120 bpmのショック状態であった。心エコーで著明な右室拡大、左室の圧排を認め、三尖弁逆流圧較差は60 mmHg台と上昇していた。肺動脈カテーテル検査で平均肺動脈圧50 mmHg以上の重症肺高血圧症を示したため、肺塞栓を疑い造影CTを撮影したが、明らかな塞栓子を認めなかった。間質性肺炎の増悪因子を考慮し、メチルプレドニゾロン1000 mg/日のステロイドパルス療法を開始した。アドレナリン0.3 μg/kg/minにより血圧を維持し、その後ノルアドレナリン、ドブタミンへ変更した。循環が安定した入室8時間後に39℃台の発熱を認め、プロカルシトニン2.63 ng/mlと上昇を示したため、血液培養採取後にピペラシリン・タゾバクタムの投与を開始した。血液培養2セットからは Escherichia coli が検出された。その後Cr 1.09 mg/dl(ベースラインの2.4倍)の腎傷害、AST 1644 U/L、T-bil 2.2 mg/dlの肝障害、急性期DICスコア7点(Plt 4.5万/μL、PT 29 %、FDP 63 μg/ml)のDICを合併したが、適切な循環維持と抗菌薬治療により改善した。ICU入室4日目に抜管し、5日目にICUを退室、入院35日目に転院となった。本症例は感染源不明の敗血症により肺疾患に起因する肺高血圧症が増悪し、右心不全を伴う高度の循環不全を呈したと考えられた。
【結論】肺高血圧症に伴う右心不全で発症したことから、早期診断が困難であった敗血症性ショックの1症例を経験した。高度循環不全患者では、敗血症の存在を疑うことが重要である。