第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

ショック

[O14] 一般演題・口演14
ショック02

2019年3月1日(金) 17:15 〜 17:55 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:増野 智彦(日本医科大学付属病院高度救命救急センター)

[O14-4] 胸腔ドレーン洗浄中に発症した空気塞栓症の一救命例

宮村 保吉1, 鈴木 健人1, 工藤 俊介1,3, 後藤 真也2, 田中 啓司1, 渡部 修1, 武居 哲洋1,3, 岡田 邦彦1 (1.佐久総合病院佐久医療センター救命救急センター, 2.佐久総合病院佐久医療センター麻酔科, 3.横浜市立みなと赤十字病院救命救急センター)

【背景】空気塞栓症は,種々の外科的処置,多くは外傷や脳神経外科・心臓血管外科・耳鼻咽喉科手術,CTガイド下経皮肺生検や経気管支生検,中心静脈カテーテル挿入や抜去における合併症として知られている.しかし,胸腔ドレナージ挿入・ドレーン洗浄などの処置においてごく稀に発症することが報告されている. 今回我々は,慢性膿胸に対する胸腔ドレーン洗浄中に空気塞栓症を発症し,救命し得た一例を経験したので報告する.
【臨床経過】70歳代男性.左上葉肺癌切除後から続く膿胸に対して定期的にドレーン交換と洗浄を外来通院で実施していた.第1病日外来ベッドで右に傾斜のかけた仰臥位で洗浄し,ドレーン交換の準備をしていたところ,呼名反応なく徐脈・房室ブロック・血圧低下・モニター心電図でのST上昇を認めた.心臓超音波検査でhigh echo bubbleを認め,単純CT検査で大脳動脈分水嶺領域・上行大動脈・右冠動脈に空気貯留を認めた.血管内治療により可及的吸引と生理食塩水灌流を実施し,治療中に意識の改善とST変化の消失を認めた.しかし右上肢完全麻痺・右下肢不全麻痺は残存したため,高気圧酸素療法を実施した.経時的に右上下肢の運動麻痺は改善傾向に転じた.第5病日までは胸部不快感や発作性心房細動を認めたが,以降は胸部症状なく経過した. 第14病日,日常生活には支障のない範囲ではあるが,右手の巧緻機能障害を軽度認めるのみで独歩・自宅退院し,リハビリ通院となった.
【結論】本症例は稀な発症機転かつ重篤な状態に陥ったが,早期から鑑別に挙げたことで迅速に適切な治療を実施でき,救命し得た.