第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(口演)

終末期

[O141] 一般演題・口演141
終末期01

Sun. Mar 3, 2019 8:45 AM - 9:45 AM 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:稲垣 範子(摂南大学看護学部)

[O141-7] クリティカルケア領域における終末期患者の患者・家族意思決定支援

橋本 一紀, 山崎 裕美, 郡山 隆太 (池上総合病院 看護部 ICU)

【背景】レスパイトで入院していた患者が急変しICUに入室。球麻痺型筋萎縮性側索硬化症の診断から約半年で呼吸不全の状態に陥っている状態であった。アドバンスケアプランニング(以下ACP)において挿管、人工呼吸器は使用しない意向であったが、予期せぬ危機的状況に直面した家族は「挿管する」代理意思決定を行い、患者は挿管下での人工呼吸器管理となった。家族からは後悔の訴えが聞かれ、患者家族の方針理解に乖離が生じていた。コンセンサス・ベースド・アプローチの観点から意思決定支援への働きかけを行うことで、患者家族が納得できる治療方針が決定可能となった症例。【目的】症例を振り返りクリティカルケア領域における終末期の患者家族への意思決定支援のあり方について再考する。【臨床経過】ICU入室より31病日の患者家族の過程をゴーランの危機プロセス5段階で振り返った。1段階では、後悔の訴えと迷い、不安の発言が日々繰り返し聞かれ、面会時、涙を流し、「ごめんね」と謝る姿が見られた。3段階では、病気を調べ、何か別の方法や納得のいく方向へ向かうために否定や肯定を繰り返し行った。5段階では、治療を進める際には家族も立ち会い、前向きに現状を受け入れ参加する姿勢が見られた。どの段階においても傾聴を統一して行い、患者の状況の変化時にはICの場を設けた。その際医療者も家族も複数名ずつ参加することで、治療方針に差異が生じないよう配慮した。結果「可能な限り、抜管出来るように治療を進める、後退はしない」方針で治療を進め、ばらつきのあった家族の気持ちがまとまり、現状を受け入れることに繋がっていった。28病日目に呼吸状態が保てなくなり、家族付き添いのもと31病日目に死亡に至った。【結論】ACPはされていたが、本人の意思に反した家族の意思決定がされた。結果、本人も家族も苦しい時間を体験することになった。しかし、突然訪れた死への恐怖を受容し、本人の意思を尊重、見守るという悲嘆過程を辿れる結果へと繋がったと考える。クリティカルケア領域では家族の価値観を尊重する重要性とともに、十分に吟味する時間がないことが特徴である。本症例においては入院時より家族の思いを確認し、危機プロセスや心理状況を把握することが必要であった。本人及び家族の病状理解、異なる思いの表出や意思の代理決定など精神的負担の軽減のため、早期から多職種介入のACPの実施が行われるかが課題となる。