[O142-1] 集中治療室での終末期医療における代理意思決定の現状
【はじめに】「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」(以下GL)では、患者の意思・事前意思または家族による推定意思に基づく治療方針の決定を推奨している。しかし、現場における代理意思決定のプロセスは多様であり、その決定に困難を伴うことも多い。当院集中治療室で終末期を迎えた患者について、診療録・看護記録を後ろ向きに分析し、「終末期との判断に至った理由」(以下;終末期判断理由)「終末期医療における代理意思決定の現状」(以下;代理意思決定の現状)を検証した。【方法】対象:2017年7月1日からの1年間に入室した患者のうち集中治療室で死亡、または終末期ケアの方針となった患者調査項目:患者背景、終末期判断理由27項目(「終末期医療へのシフトの判断に影響を与える情報」高田望ほか;2015日本クリティカル看護学会誌11;67-75参照)、代理意思決定の現状について13項目(診療録及び看護記録からGL参照に抽出)、説明後の治療方針の変化(GL参照)【結果】対象患者21名。平均年齢73.8才。平均滞在日数9日。循環器疾患11名、脳外科疾患3名、消化器外科疾患2名、呼吸器疾患3名、熱傷1名、敗血症1名。人工呼吸器装着20名、体外循環装着4名、腎代替療法2名。終末期判断理由では、16名が「自力食事摂取機能の消失」、15名が「人工呼吸器を外せない」、14名が「高齢」、13名が「根治性のない病態」、10名が「家族がそれ以上の治療継続を希望しない」、10名が「回復困難な脳障害」に該当した。診療録の80%以上で「説明相手、説明した内容、終末期である旨、家族らの意思」について、看護記録の80%以上は「説明相手、家族らの理解受容状況、家族らの意思」について記載していた。「患者の意思、事前意思の有無」「家族らの推定意思」についての記載は医師看護師ともに5%以内であった。全員が代理意思決定を必要とし、倫理委員会の介入はなかった。延命処置を含む治療維持希望は2名、治療減量希望6名、治療終了希望6名、条件付きで治療継続7名であった。【結語】すべての患者で治療方針決定に際し代理意思決定されていたが、患者の意思が十分に反映されていない可能性が明らかになった。医師は患者の医学的状況を説明し代理意思決定を確認する役割を、看護師は家族の理解受容状況の把握や思いを確認する役割を担っていた。