第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

終末期

[O142] 一般演題・口演142
終末期02

2019年3月3日(日) 09:45 〜 10:35 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:小池 薫(京都大学大学院医学研究科 初期診療・救急医学分野)

[O142-2] 症例を通してPICUにおける終末期医療のあり方を考える

田村 佑平, 安藤 寿, 峰尾 恵梨, 昆 伸也, 金子 忠弘 (北里大学 医学部 小児科)

【背景】小児医療の基本精神は,児の気持ちや意見を最大限尊重し,児にとって最善の利益に基づくものでなければならない.これは,どんな場面でも常に最優先させなければならないことであり,小児集中治療室(pediatric intensive care unit:PICU)でも無論当てはまる.PICUでは場所柄,終末期の患児を診療する場面にしばしば直面する.【臨床経過】11歳男児.家族構成は,母,本児,弟(6歳)の母子家庭.無熱性けいれんを契機に,視床神経膠腫と診断された.腫瘍摘出術を行うも水頭症や脳幹への播種を認め,嚥下障害,中枢性無呼吸などが出現しPICUでの全身管理を行った.脳幹腹腔シャント術や気管切開術を施行し,放射線治療を開始した.病状の進行は早く,主治医からは生命予後が極めて不良であることが,母親に告げられた.PICUでは,主治医,集中治療医,看護師,臨床心理士などを含めた多職種間のカンファレンスで終末期であることを共有し,児の要望を抽出し,希望に寄り添った医療を提供できるよう努めた.ある程度理解が得られる年齢であり,文字盤やスピーチカニューレを用いてコミュニケーションを図った.その中で,ピアノ教室の教師である母親の演奏を聞きたいとの要望を抽出し,院内での演奏会を企画・実行した.【結論】PICUにおける終末期医療の特徴として,次の2点が挙げられる.(1)小児であること(2)ICUであること.(1)成人と比べ,言語コミュニケーションをとることが困難なこともあり,患児の発達度に合わせた対応が必要である.また代弁者である保護者とも十分話し合いを行い方針決める必要がある.(2)病状の進行が早いことが多く,迅速な対応が迫られる.PICUにおける終末期医療では,個別性に合わせた医療を行うことが重要であり,そのことを本症例を通して再認識したので報告する.