[O142-4] その人らしさを尊重するために家族と医療チームで考えた事例
【背景】集中治療領域における終末期医療は複雑かつ多様であり判断が困難に至るケースがあるため、その人にとって最善は何かを家族と医療チームが共に考えることが重要である。今回、家族・医療チーム・臨床倫理委員会で延命措置に対する考えの相違を認めたが、人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン、救急・集中治療における終末期医療に関するガイドラインに基づき話し合い、代理意思決定支援を行った事例について報告する。【臨床経過】A氏、70歳台女性、窒息による院外心停止で搬送されTTMを施行、第3病日に低酸素脳症の悪化を認め、夫、長女、次女、孫と今後の方針を話し合った。A氏は気管切開や延命措置をしないと話していたことから、家族は気管切開や積極的治療を控えることを希望し、3日後に延命措置の対応を話し合うことにした。第6病日、医師・看護師のカンファレンス後に家族と話し合い、気管切開はせず呼吸器離脱を目指すが離脱は1週間後を希望された。第7病日、医師はA氏が穏やかな最期を迎えるために呼吸器離脱の時期を決めることが重要と考え家族と話し合ったが、家族は全員に見守られることがA氏にとっての最善と考えていた。倫理的問題として、A氏にとっての最善の呼吸器離脱時期は、A氏の意思を尊重して苦痛をすぐに取り除くことか家族の希望を優先するのかを、家族との話し合いまでの期間、家族が決断に至った思いなどを聴取し医療者間で何度も議論した。第14病日、医師・看護師のカンファレンスにて、呼吸器離脱はA氏の意思を尊重する行為であり家族が終末期の受け入れができていることを確認し、臨床倫理委員会の承認を得て第15病日、薬剤を調整し自発呼吸を確認した上で離脱した。家族は、離脱後も努力呼吸が持続し挿管チューブの苦痛を感じていると考え抜管を希望した。第16病日、医師・看護師・薬剤師のカンファレンスにて、A氏にとっての最善は家族の希望に沿って抜管することか、自然に呼吸停止を待つことかが倫理的問題と考え、A氏が延命措置を希望していなかったことからA氏の意思を尊重するには抜管も選択肢に入ると結論を出した。第17病日、家族と話し合った結果、家族総意で抜管を希望したため臨床倫理委員会の承認を得て抜管、第32病日にA氏の最期を家族で迎えた。【結論】A氏にとっての最善を考えるには、家族・医療チームで何度も議論をすることが重要であるとわかった。