[O143-5] 当院におけるICD植込み患者の終末期除細動機能停止についての検討
【背景】デバイス治療の進歩と普及、ならびに高齢社会の進展に伴い、ICD植込み患者の終末期を看取る機会が増えてきている。しかし、増悪寛解を繰り返す心不全においては予後予測が困難であり、終末期の判断に苦慮するケースが多くみられる。また予期せず急激に容体が悪化した症例では、十分なアドバンスケアプランニングがなされていない場合もある。終末期におけるICDの除細動機能停止については、多職種での慎重な協議が必要であるが、実臨床の現場においては十分な議論がなされていないこともある。【目的】ICD植込み患者の終末期における、除細動機能停止の現状を調査する。【方法】2005年5月から2018年8月までの期間、当院においてICD植込みを行った連続119症例(平均年齢 67.7±10.6歳、男性 68%、ICD 53例、CRT-D 66例)を対象とした。追跡期間中に死亡した症例において、死亡前の除細動機能停止の有無について検討を行った。 【結果】ICD植込み後の平均追跡期間は1534日、中央値1174日であった。期間中に46症例(38.7%)が死亡しており、死亡症例における植込みから死亡までの平均期間は979日であった。当院にて死亡が確認された症例は31例であり、死亡前に除細動機能を停止していた症例は14例(45.2%)であった。循環器科が主科として終末期を看取った症例では、45.4%(10/22)、他科で死亡が確認された症例では、44.4%(4/9)で除細動機能が停止されていた。除細動停止から死亡までの期間は平均14日、中央値3日であった。心肺停止で救急搬送された5症例ではいずれも除細動機能停止はなされなかった。循環器緩和ケアチームが発足した2016年以降は、心肺停止搬送および院内急変症例以外では77.8%(7/9)で除細動機能が停止されていた。 【結論】終末期におけるICD植込み患者の除細動機能停止については、倫理的問題もはらんでおり、多職種での協議、および患者、家族との十分な話し合いが必要である。循環器疾患は予後予測が困難であるが、その中でもICD植込み患者は基礎疾患が重篤であるケースが多く、急な容体悪化も起こりうる。当院では循環器緩和ケアチームが発足して以降は、多職種の協議により除細動機能停止に至った症例が増えているが、緊急症例や他科で看取りとなる症例についてはまだ十分な検討がなされていない場合があり、今後の課題であると考えられた。