[O143-6] 全脳機能不全症例への対応から考える小児救命救急センターPICUにおける小児終末期医療のあり方
【背景】「救急・集中治療における終末期におけるガイドライン」ではICUにおける終末期病像の一つとして, 不可逆的な全脳機能不全が挙げられている。小児例では呼吸循環補助の継続により心臓死に至らず年単位で生存する例も報告されており, 患者の事前意思の確認ができない場合が圧倒的に多い小児では特に, 終末期の判断と延命治療に関する方針決定に様々な困難を伴う。今回, 当院PICUで臨床的に全脳機能不全と判断された症例を検討し, PICUでの終末期医療のあり方について考察した。
【方法】本研究は, 単施設後方視的観察研究である。対象期間は, 2016年3月から2018年8月までの30ヶ月間に当院PICUに入院した症例のうち, 入院後に深昏睡, 両側の瞳孔散大固定, 脳幹反射の消失, 聴性脳幹反応の消失, 平坦脳波などから臨床的に全脳機能不全と判断した症例に関して, 神経予後評価後に選択された治療方針について, 積極的治療の継続(C群), 現行治療を継続し新たな治療は加えない (withhold, WH群), 現行治療の中止(withdrawal, WD群), 法的脳死判定の実施(brain death, BD群)のいずれに該当するか, ICU入室の理由, ICU滞在日数, 治療内容と家族支援の内容に関して検討した。
【結果】全入院1,045例中, 全脳機能不全症と判断された症例は11例(1.1%)であった。神経予後評価後の治療方針に関しては, C群5例, WH群5例, BD群1例で, WD群に該当する症例はなかった。PICU入室の理由は, 院外心停止蘇生後8例, 重症頭部外傷2例, 出血性ショック脳症症候群1例であった。ICU滞在期間(中央値)はC群38.5日, WH群20日, BD群9日であった。C群中, 2例で神経評価後も腎代替療法を実施し, 3例でPICU退室後に一般病棟で人工呼吸管理(2例は気管切開, 1例は気管挿管のまま転院)を継続した。WH群, BD群の全例で, 方針決定から死亡までのICU滞在期間中, 制限のない家族面会と同室の許可, 添い寝, 面会時の抱っこなどを含む緩和的な家族対応を積極的に行なった。
【考察】PICUにおける全脳機能不全症例への治療方針を判断する際には, 終末期であるという前提を共有した上で, 個々の症例毎に, 患児と家族にとっての最良が何であるかを医療チーム, 家族を含めた話し合いの中で協議する必要があり, 治療継続, withhold, withdrawal, 条件合致時の脳死臓器移植に関するオプション提示といった方針の多様性を受け入れる素地を医療チーム内に形成することが重要と考えられた。
【方法】本研究は, 単施設後方視的観察研究である。対象期間は, 2016年3月から2018年8月までの30ヶ月間に当院PICUに入院した症例のうち, 入院後に深昏睡, 両側の瞳孔散大固定, 脳幹反射の消失, 聴性脳幹反応の消失, 平坦脳波などから臨床的に全脳機能不全と判断した症例に関して, 神経予後評価後に選択された治療方針について, 積極的治療の継続(C群), 現行治療を継続し新たな治療は加えない (withhold, WH群), 現行治療の中止(withdrawal, WD群), 法的脳死判定の実施(brain death, BD群)のいずれに該当するか, ICU入室の理由, ICU滞在日数, 治療内容と家族支援の内容に関して検討した。
【結果】全入院1,045例中, 全脳機能不全症と判断された症例は11例(1.1%)であった。神経予後評価後の治療方針に関しては, C群5例, WH群5例, BD群1例で, WD群に該当する症例はなかった。PICU入室の理由は, 院外心停止蘇生後8例, 重症頭部外傷2例, 出血性ショック脳症症候群1例であった。ICU滞在期間(中央値)はC群38.5日, WH群20日, BD群9日であった。C群中, 2例で神経評価後も腎代替療法を実施し, 3例でPICU退室後に一般病棟で人工呼吸管理(2例は気管切開, 1例は気管挿管のまま転院)を継続した。WH群, BD群の全例で, 方針決定から死亡までのICU滞在期間中, 制限のない家族面会と同室の許可, 添い寝, 面会時の抱っこなどを含む緩和的な家族対応を積極的に行なった。
【考察】PICUにおける全脳機能不全症例への治療方針を判断する際には, 終末期であるという前提を共有した上で, 個々の症例毎に, 患児と家族にとっての最良が何であるかを医療チーム, 家族を含めた話し合いの中で協議する必要があり, 治療継続, withhold, withdrawal, 条件合致時の脳死臓器移植に関するオプション提示といった方針の多様性を受け入れる素地を医療チーム内に形成することが重要と考えられた。