第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

終末期

[O144] 一般演題・口演144
終末期04

2019年3月3日(日) 11:25 〜 12:15 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:櫻井 裕教(東京都済生会中央病院麻酔科)

[O144-2] DNAR指示撤回に至った2症例について撤回の妥当性を振り返る

余川 順一郎, 久保 達哉, 山本 剛史, 中山 祐子, 北野 鉄平, 佐野 宏樹, 佐藤 康次, 野田 透, 岡島 正樹, 谷口 巧 (金沢大学附属病院 集中治療部)

【背景】2016年の本学会からのDNAR指示のあり方についての勧告では、DNAR指示はその妥当性を繰り返して評価し、患者と医療・ケアチームが繰り返して話合い、評価したり合意形成を行うべきであるとされている。我々は一旦DNARについて合意が得られたものの、撤回に至ったが再度DNARとなった症例や撤回そのものが妥当であったか疑問の残る症例を経験した。
今回代表的な2例を提示し、それぞれのDNAR指示の妥当性の評価経緯について振り返る。
【症例1:臨床経過】57歳男性。維持透析中であったが、重症僧房弁狭窄症、大動脈弁狭窄症、冠動脈狭窄があり透析困難となったため手術を検討されていた。術前精査の動脈造影中に心室細動となった。蘇生したがROSCまで20分を要した。緊急冠動脈造影で右冠動脈の閉塞を認め、経皮的冠動脈形成術を行った。ICU入室時点で、家族により今後改善したとしても外科的手術は受けないことを希望され、併せてDNARとなった。しかし、2日後に抜管し、本人に病状説明を行った所、DNARの希望なく、一旦DNARを解除した。最終的にやはり手術は希望されず、本人、家族の話合いで再度DNARとなったが、維持透析可能な状態まで改善し転院した。
【症例2:臨床経過】87歳男性。心不全にて紹介入院され、当初1週間前発症の心筋梗塞が疑われ経皮的冠動脈形成術が行われた。しかし術後も心不全改善乏しく、low flow low gradientの大動脈弁狭窄症の影響も大きいと考えられた。第6病日未明に2度心室細動から心肺停止となり蘇生したもののDNARとなった。その後日中に離握手可能となるまで意識障害が改善した事を受けて再度主治医によりDNAR解除のための病状説明がなされた。翌朝心室細動から再度心肺停止となり、蘇生を試みたが心拍再開せず死亡退院となった。
【結論】症例1では最終的に家族と相談の結果再度DNARとなったが、意識が回復した時点では患者はDNARを希望されなかったため一旦DNARを解除して方針を再検討したのは妥当であったと考えられた。しかし、症例2では、DNARとなった根本原因の解除の目途が立たない状況でDNARを解除しており、その背景には、主治医のDNARと心肺蘇生以外の治療の差し控えに関する混同があると考えられた。DNAR指示はその妥当性について適宜検討する事が重要ではあるが、撤回する際にも妥当性を十分検証して行う必要があると考えられた。