第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 研究

[O145] 一般演題・口演145
感染・敗血症 研究07

2019年3月3日(日) 08:45 〜 09:25 第13会場 (国立京都国際会館1F Room F)

座長:笹野 幹雄(敬愛会 中頭病院 集中治療科)

[O145-5] ESBL産生菌による尿路感染症症例の初回抗菌薬に対する感受性の相違および転帰の観察研究

北野 夕佳1, 若竹 春明1, 斎藤 浩輝1, 吉田 徹1, 吉田 英樹2, 堤 健1, 吉田 稔1, 桝井 良裕1, 平 泰彦2, 藤谷 茂樹2 (1.聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院 救命救急センター, 2.聖マリアンナ医科大学 救急医学)

【背景】尿路感染症(以下UTI)、特に重症症例では、感受性のある抗菌薬を機を逸さずに投与することが重要である。近年のextended spectrum beta lactamase(ESBL)産生菌の増加に伴い、広域抗菌薬が多用される傾向にある。不必要に広域な抗菌薬の乱用は更なる多剤耐性菌の増加につながりうる。【目的】ESBL産生菌を起因菌とするUTIにおいて、初回抗菌薬に対する感受性に応じた転帰を、systemic inflammatory response syndrome(SIRS)を満たす群(SIRS群)、SIRSを満たさない群(non-SIRS群)において検討する。【方法】2012年6月から2017年7月までの当院でのESBL産生菌によるUTI症例を抽出しその転帰を評価した。単変量解析およびSIRSの有無に応じた二変量解析を行った。【結果】当院で尿培養が105CFU(colony forming unit)/mL以上であった検体を集積し(n=1880)、診療記録の評価にて細菌性UTI症例のみを抽出し(n=844)、SIRS群・non-SIRS群に分類した。SIRS群UTI症例は336例(うちESBL44例, 13.1%)、non-SIRS群UTIは508例(うちESBL 64例, 12.6%)であった。ESBLによるSIRS群のUTI症例において、初回抗菌薬に感受性ありは54.5%(24/44) で、うち 91.7%(22/24)は軽快、悪化・死亡は 8.3%(2/24)であった。SIRS群で初回抗菌薬に感受性なしは43.2%(19/44)で、うち47.4%(9/19) は軽快、47.4%(9/19) は抗菌薬変更後に改善しており、悪化・死亡は 5.3%(1/19)であった。【結論】ESBL産生菌によるUTIに対する初回抗菌薬の選択に関し、広域抗菌薬の適応は更なる研究を要する。
image/O145-5(10637-1.jpg