[O146-1] 下部消化管穿孔術後の汚染創に局所陰圧洗浄療法(NPWTi-d)を導入し、創部感染を予防し得た1例
【背景】下部消化管穿孔の手術創部感染(SSI)は発症率が高く50%を超えるとの報告もある。SSIの発症により入院期間延長や術後化学療法導入遅延など様々な問題が生じるのでその予防は重要である。近年、消化器外科領域のSSIの予防において局所閉鎖陰圧療法(NPWT)の有用性が報告されている。当院でもSSI予防目的にNPWTを使用してきたが、ステロイド内服中の症例や高齢者では治療に難渋することがあった。一方で汚染された感染創や褥瘡の治療においてはNPWTよりも局所陰圧洗浄療法(NPWTi-d)の方が効果的であったと報告されている。しかしNPWTi-dをSSIの予防的に使用した報告は少ない。今回下部消化管穿孔術後創部にNPWTi-dを予防的に使用した症例について報告する。【症例】症例は77歳男性。関節リウマチの既往がありプレドニン5mgを内服していた。来院当日から下腹部痛があり、改善しないため救急要請、当院に搬送された。身体所見では腹部に腹膜刺激兆候をみとめ、腹膜炎を呈していることが予測された。造影CTにて、S状結腸穿孔と診断されたため同日緊急手術となった。開腹すると、S状結腸に直径2cmの穿孔があり、腹腔内に糞便が露出していた。腹水は混濁し、腹膜は全般的に発赤を伴っており汎発性腹膜炎の様相を呈していた。S状結腸部分切除と人工肛門造設術を施行した。創部は筋膜を2-0 Vicrylで連続縫合で閉鎖し、皮下と表皮は3-0ナイロンで5cm間隔で荒く閉鎖した。術翌日に創部出血がないことを確認してNPWTi-d(洗浄:生食30ml, 浸漬10分, 吸引2時間, 吸引圧75mmHg)を開始した。NPWTi-dを7日間継続し、組織色調が良好であること、感染兆候がないことを確認してNPWTに変更した。その後NPWTを5日間継続した。創部の癒合は良好で、現在術後1か月経過するが創部離開やSSIは認めていない。【結語】ステロイド内服中の下部消化管穿孔術後の創部にNPWTi-dを導入した。SSIのハイリスク症例であったが、SSIを起こすことなく創閉鎖が可能であった。今後さらに症例を重ねていきたいと考える。